重信房子さんを支える会発行の「オリーブの樹」という冊子には、重信さんの東日本成人矯正医療センター(昭島市)での近況などが載っている。私のブログの読者でこの冊子を購読している人は少ないと思われるので、この冊子に掲載された重信さんの近況をブログで紹介することにした。
当時の立場や主張の違いを越えて、「あの時代」を共に過ごした同じ明大生として、いまだ獄中にある者を支えていくということである。

今回は「オリーブの樹」154号に掲載された重信さんの獄中「日誌」の要約版である。(この記事の転載については重信さんの了承を得てあります。)
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<独居より 2021年2月8日~2021年4月30日>
2月8日 資料の中1こいろいろな新左翼組織などの年頭表明があり読んでいるところです。現実と見通しと現在の労働運動の生死を示すような明確な論脱は「コモンズ」に載っていた、武建一さんの「年頭あいさつ」から学び実感しました。あたりまえだった労働組合の要求やスト権も「犯罪」とされている現実。中小企業と関生(かんなま)が協同して大企業の収奪と闘う、対抗赴会のロールモデルとして存在していることが許せない国ぐるみの権力の戦略的攻撃。それに抗してコロナで露わになった資本主義、新自由主義文明を転ずる勢いを読んで感じます。
今のところ、コロナは友人近辺で罹患したという話は聞きません。ほっとしています。(中略)

2月12日 北側の房に移ってから、陽が当たらないため外も見えず寒い。ズボン下2枚、タイツ、それにパジャマをはいて、八王子時代のような格好。カイロを毎日使うようになって手を暖めています。(中略)

2月16日 資料・本などが届き乱読中。今日は味岡さんからの「テント日誌」「監獄人権センター」のニュースレター(刑事施設のコロナ感染と対策、実情興味深い)「月刊靖国・天皇制問題情報センター通信No198」「紙の爆弾3月号」「暴力暴言型社会運動の終焉」、「創」2月と3月号、「中東研究NQ540」中東資料一式、他冊子など。(中略)

2月17日 肺炎の予防接種の問診票を記入し、午後、主治医診察時に接種をすませました。(中略)

2月28日 今日は日曜日。50年前この国を出発して、パレヌチナ無紋闘争に学び共に闘かおうとベイルートに向かった日です。“一炊の夢にはあらず我が旅路涙と血潮の尊き日々あり”と一首が雫れます。奥平さん、安田さん、日高さん、丸岡さん他パレスチナアラブの戦友たち、多くが彼岸へと旅立ち、私や同世代の友人たちもまた、その途上にあると改めて思います。それにしても劣化し続ける国際社会、パレスチナの戦いは厳しく、強権に満ちた権力は日本も伺じ。変革の兆しを探したいのだけど……。(中略)

3月3日 今日の昼食時3グラムのひなあられが、5センチの小さな袋で添えられていました。午後は和尚が法要に見えて、土曜会で積極的に沖縄現地闘争など関わっでおられた、生田校合だった半田さんが一週間程前に急逝されたと知りました。
 和尚は彼岸法要、3月t3日の遠山さんの50回忌、半田さんの急逝、それに私から吉村先生の追悼もお願いして3月法要となりました。土曜会も
柳家三壽さん含め亡くなられる方が……。コロナではないとのことです。私が出てくる項には世界が一変しているのでは?と和尚も話でしています。健康を願うばかりりです。
 朝日新聞の記者から、去年逮捕20年目の取材・掲畿ならずも、引き続きフオローしてい。るが、大谷弁護士が公表された私の手紙の中の「紙千切り作業」について如りたい。精神障害作業療法とのこと、センターの回答はどうだったのか?紙千切り作業はまだ現在も続いているのか?などです。
オリーヅの樹152号にも載っているように、センターの回答は「自分の考えに過ぎない」で「不決定jでこしたが、あの回答直前に中止されています。センター全休でとりやめたとのこと。良かったと思っています。
“刑務作業終了思考を刺激してシモーヌ・ヴェイュの固き論読む” (中略)

3月9日 2/25号人民新聞に「金儲けの道1具と化した遺伝子組み換え、ワクチン」という一面り記事に、なるほど!と、とても目を開かされました。
ジョン・ル・カレのベストセラーで映画にもなった『ナイロビの蜂』は1996年にナイジエリアでフェイザー社が実際おこしたスキャンダルがモデルだったと知りました。新抗生剤開発のため「人道援助」を装って子供たちに人体実験。危険な治験をやり犠牲者続出で有罪。でもナイジエリア政府を買収した話。ワクチンのからくりも、とてもよくわかりました。ネオリベラル勢力にとって保
健医療分野は教育分野に並んで最後の市場化のフロンティア。コロナ禍の弱肉強食。税金は、ワクチンより公的医療インフラの改革整備など公共部=門に投資すべきで製薬資本の懐に入れではならないと医師重光哲明さんは語っています。彼は「集団免疫原則」に則った医療体制整備を求めています。(中略)

3月1 2日 遠山さんの命日12日。詠んだのは“セーターを取換えっこして再会を誓いて会えぬ君の命日”“海に月煌めく港ヨコハマで恋打ち明けし友連赤に死す”など。(中略)

3月15日 今日は「支援連ニュース420号」受けどりました.「狼をさがして」のドキュメンタリ一映画上映のチラシも:同封されていて、この映画が日本でも上映されることを知りました.「東アジア反日武装戦線一狼、大地の牙、さそり.-1974年、日本を揺るがした20代の若者たち」の今日までを捉えた映画です。監督、プロデューサーば韓国のキム・ミレきん。「東ア」の人たちが何故闘ったのか。「反日」「武装」の意味を追いつつ新しい視座を拓いていく優れたドキュメンタリーのようです。韓国でもすでに賞を得ているとのこと。この「支援連ニュース」にキム監督のインビユーやシム・アジョンさん(独立研究活動家)の韓国からの通信も載っていて、何故この映画を撮るに至ったのかもよくわかります。韓国での日帝植民地支配の歴史と「東ア」の闘いが、クロスして、今日的意義をもって語られています。「東ア」の作戦で逮捕された人々が、支援の仲間たちと、「刑務所に閉じ込められることによって結ぱれた関係」を得たこと.それがこのドキュメンタリーの訴える力になっているようです。コ・ヴィングオさんの言業が印象的です。“「東ア」の人たちが持ち歩いた青酸力りが社会や人々との関係や言葉への不慣を象徴している。孤立も凝縮もあったが事件後結ばれた強力て堅固な支援連との関係こそ、武装しない反日武装戦線、武装を解体させる武装戦
線、二番目の戦線である“と述べて、“その爆発力をソウルまでもたらしたのは、今まで彼らを支援してきた多くの人々と思う”と語っていて、心に沁みます。ぜひいつか観たいです。(中略)

3月19日 Y.さんからの遠山美枝子ざん50回忌法要墓参写真報告届きました。コロナ禍の今回は人数を絞って数人としたようです。墓苑の上に到着すると素晴らしい見晴らし。法衣のN和尚が法要の道具を準備し、墓前にはお花と遠山さんの写真、供物はバナナ、いちごやお茶とお菓子。焼香の準備を整え線香に火をつけて、和尚の読経が静かな墓苑に流れます。供花が風に微かに揺れて墓参を喜ぶよう。順番にご焼香。以上のような文と共に写真がたくさんそれに掲示貼付されて、墓参の様子がわかJります。ありがたいことです。(中略)
Iさんからの資料など届きました。
受け取った「治安フオーラ3月号」に「令和2年過激派四大ニュース]の記事があります。①中核派議長・清水丈夫の半世紀ぷり登場②革マル派周辺で変事発生、(分派開争仕掛ける「探求派」の出現などなど。公安警察関係の月刊誌、共産党分析もあり、年々もう20年前解散の私たちの言及ありと、当局側の思惑もわかるので興味深い。(中略)

3月23日 ベランダの隅に濃紫と薄い紫の二種のスミレ発見!「スミレよ!」みんな集まって「きれい!」「春らしい花見だね!jとニコニコ。
小嵐さんが送ってくださった新著だったのですね、先日かちF検査中1とのことで昨日F一部抹消の上交付」に同意し署名して今日届きました。『ここは何処、明日へめ旅路』という題の本。帯には「出所した党派初の“軍人”を待っていたのは、組織の分裂―」とあります。社青同解放派の経験を活かした小説のようです。どこが抹消?と見ると、101P6~7行のー文が黒く抹消されています。刑務所服役中の話です。「~外部の業者がわざわざ残した煙草の吸い殼をマッチやライターはないのでー」以下黒線。多分危険事項としで抹消したのでしよう。
「救援623号」は強烈です。足立さんの「狼をさがして』の映画批評もいいのですが、まず横浜刑と千葉刑のコトナクラスターとそのデタラメさに恐ろしくなります。救援連絡センターが弁護士らと横浜・千葉刑こ抗議の行動を起こしています。受刑者たちからの率直な報告が何人もから寄せられていて、あまりのひどさ、大手新聞やTVでも目に出来ない真相を知ることが出来ます。
横浜ではリスク承知で密接な狭いスペースで、-日約十回毎朝工場で二列に並び「いっち!に-!さん!しー!いっち~」と大声を上げて走らされたり、
運動させられるひどさ。たちまち感染でもマスク一枚のみなど。感染した受刑者も寄稿しでいますが、大変な危険の連続です。ひどい。自由に自身を守れない受刑者に……。
 当センターはさすがに病院で厳しい予防体制がとられいます。でも患者に布製マスク二枚なので、洗って使用する仕組み。私は元々気管が弱いので、医師の許可で自費でマスクを購入し、不織布のものを使っています。布製は感染防止力が弱いのでは?と思いますが……。(中略)

3月3 0日 「土地の日」のパレスチナ。今、イスラエルの総選鉱ネタニヤフのリクードが第一-党勝利再びのようです。パレスチナの人々は反占領の闘いを更に強いられるでしょう。バイデン政権にエールを送りイスラエルとの共同を始めてしまったアッパス自治政府は、5月選挙を迫られ、どうしているでしょう。今日はまた、ユセフ檜森の命日。あの2002年も満開の桜吹雪で、その下で彼は命を断ったのですが、同じような日。
  春爛漫桜吹雪を浴びながら
         己の身を焼く人の真心
いろいろな思いが浮かびます。

4月6日 この聞、体調を崩してしまいました。4月4日(日)から寒気と関節痛、頭痛でロキソニンを朝とター錠服用。それでも治らず(月)も一錠服用して朝8時45分の用務作業へ整列。ところがとても胃が痛くこれまで丈夫な胃だったのに、どうしたのだろう……、と不安。胃薬と診察をお願いし症状を聴き触診した主治医は、「ロキソニンが強い薬で、胃を荒らしたのでしょう」と。「でもとても痛いんですけど」と言うと、痛いものだそうです。夕方から胃薬をもらい、今日は大分良くなりました。ロキソニンの副反応か、便通も止まり腸に支障のある私は、四苦八苦。今日は、ずいぶん良くなりました。(中略)

4月14日 先日「フクシマ50」をDVD日曜番組で観ました。事実に基づくドキュメント風、米国の「ともだち作戦」が、やたら賛美されたり、首相や東電首脳はマンガチックで。吉田所長役は、怒り怒鳴りまくったり、うーんでもありましたが、これまではテレビもなく全く視覚的に3・11を知りえなかったので、当時の流れをよく知ることが出来ました。TV5 : 00~7 : 00 (土、日曜13 : 00~15: 00も)の他に(日)、(土)には映画もやります。「鬼滅の刃」や「スターウォーズ」なども。でも時間がないので観ません。今回、「フクシマ50」を初めて観ました。月替わりの映画メニューです。
 「治安フォーラム」を読むと、公安警察の見方がよくわかります。もう20年も前に解散し、「後期高齢者」の私さえ危険視のよう。「組織」は無いのに「ある」とし、「リッダ闘争50年」や私の「出所」まで危険視し、「重要なJRAの2022年」とか。予算獲得と話題に欠けているので、7Q年代の闘いを持ち出して若手教育しているのでしょうか。

4月16日 今日ベランダに出ると草が刈られてしまいました。ポピーの蕾もスミレも消えていました。「いやがらせのよう!」と残念がりましたが……。白いツツジが3.4つ花を開きはじめていますが、「雑草」の中、花はすべてなくなってしまいました。
 Mざんがエルサレム支局の朝日新聞4月4日日曜版で高野遼記者が書いた記事に抗議の呼び掛けのコピーを送って下さつたとのこと。グローブ版や夕刊、(3/29~4/2)のパレスチナ関連記事内容が残念なものでしかないと指摘されています。当年から読売が読めなくなって、朝日との読み比べが出来ないのですが、朝日のパレスチナ記事、特にエルサレム支局発は読売よりも評価できません。読売は事実関係をきちんと記しますが、朝日は主観的理解中心の記述が多く、朝日の大好きな(喧嘩両成敗論)が多いのです。
送って下さったものを読んでみます。朝日記者は、イスラエルのワクチン賛美より、シオニストネットワークでシオニストのユダヤ人アルバート・ブ-ラ米ファイザーCEOがネタニヤフとタッグを組み「ユダヤ人を救い」「治験データ個人情報提供」の二人三脚でパレスチナ人を踏みつけにしてワクチン宣伝・外交をしていることをもっと書くべきなのに……。(中略)

4 月28日 久しぶりのコーラス「よろこびの歌」と東北大震災で学校の先生がつくり各地で歌われているというT幸せを運ぼう」と「花は咲く」。1時間は瞬く間に。(後略)

(終)

【お知らせ その1】
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『「全共闘」未完の総括ー450人のアンケートを読む』2021年1月19日刊行!
全共闘運動から半世紀の節目の昨年末、往時の運動体験者450人超のアンケートを掲載した『続全共闘白書』を刊行したところ、数多くのメディアで紹介されて増刷にもなり、所期の目的である「全共闘世代の社会的遺言」を残すことができました。
しかし、それだけは全共闘運動経験者による一方的な発言・発信でしかありません。次世代との対話・交歓があってこそ、本書の社会的役割が果たせるものと考えております。
そこで、本書に対して、世代を超えた様々な分野の方からご意見やコメントをいただいて『「全共闘」未完の総括ー450人のアンケートを読む』を刊行することになりました。
「続・全共闘白書」とともに、是非お読みください。

執筆者
<上・同世代>山本義隆、秋田明大、菅直人、落合恵子、平野悠、木村三浩、重信房子、小西隆裕、三好春樹、住沢博紀、筆坂秀世
<下世代>大谷行雄、白井聡、有田芳生、香山リカ、田原牧、佐藤優、雨宮処凛、外山恒一、小林哲夫、平松けんじ、田中駿介
<研究者>小杉亮子、松井隆志、チェルシー、劉燕子、那波泰輔、近藤伸郎 
<書評>高成田亨、三上治
<集計データ>前田和男

定価1,980円(税込み)
世界書院刊

(問い合わせ先)
『続・全共闘白書』編纂実行委員会【担当・干場(ホシバ)】
〒113-0033 東京都文京区本郷3-24-17 ネクストビル402号
ティエフネットワーク気付
TEL03-5689-8182 FAX03-5689-8192
メールアドレス zenkyoutou@gmail.com  

【1968-69全国学園闘争アーカイブス】
「続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このページでは、当時の全国学園闘争に関するブログ記事を掲載しています。
大学だけでなく高校闘争の記事もありますのでご覧ください。


【学園闘争 記録されるべき記憶/知られざる記録】
続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このペ-ジでは、「続・全共闘白書」のアンケートに協力いただいた方などから寄せられた投稿や資料を掲載しています。
知られざる闘争の記録です。


【お知らせ その2】
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「語り継ぐ1969」
糟谷孝幸追悼50年ーその生と死
1968糟谷孝幸50周年プロジェクト編
2,000円+税
11月13日刊行 社会評論社

本書は序章から第8章までにわかれ、それぞれ特徴ある章立てとなっています。
 「はしがき」には、「1969年11月13日、佐藤首相の訪米を阻止しようとする激しいたたかいの渦中で、一人の若者が機動隊の暴行によって命を奪われた。
糟谷孝幸、21歳、岡山大学の学生であった。
ごく普通の学生であった彼は全共闘運動に加わった後、11月13日の大阪での実力闘争への参加を前にして『犠牲になれというのか。犠牲ではないのだ。それが僕が人間として生きることが可能な唯一の道なのだ』(日記)と自問自答し、逮捕を覚悟して決断し、行動に身を投じた。
 糟谷君のたたかいと生き方を忘却することなく人びとの記憶にとどめると同時に、この時代になぜ大勢の人びとが抵抗の行動に立ち上がったのかを次の世代に語り継ぎたい。
社会の不条理と権力の横暴に対する抵抗は決してなくならず、必ず蘇る一本書は、こうした願いを共有して70余名もの人間が自らの経験を踏まえ深い思いを込めて、コロナ禍と向きあう日々のなかで、執筆した共同の作品である。」と記してあります。
 ごく普通の学生であった糟谷君が時代の大きな波に背中を押されながら、1969年秋の闘いへの参加を前にして自問自答を繰り返し、逮捕を覚悟して決断し、行動に身を投じたその姿は、あの時代の若者の生き方の象徴だったとも言えます。
 本書が、私たちが何者であり、何をなそうとしてきたか、次世代へ語り継ぐ一助になっていれば、幸いです。
       
【お申し込み・お問い合わせ先】
1969糟谷孝幸50周年プロジェクト事務局
〒700-0971 岡山市北区野田5-8-11 ほっと企画気付
電話086-242-5220(090-9410-6488 山田雅美)FAX 086-244-7724
E-mail:m-yamada@po1.oninet.ne.jp

【お知らせ その3】
ブログは概ね隔週で更新しています。
次回は9月24日(金)に更新予定です。