このブログでは、重信房子さんを支える会発行の「オリーブの樹」に掲載された日誌(独居より)や、差し入れされた本への感想(書評)を掲載している。
今回は、差入れされた本の中から「女子学生はどう闘ってきたのか」の感想(書評)を掲載する。
(掲載にあたっては重信さんの了解を得ています。)
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【「女子学生はどう闘ってきたのか」(サイゾー刊)】
「女子学生はどう闘ってきたのか」(小林哲夫著・サイゾー刊)を読みました。
この本の帯に上野千鶴子さんの言葉「女子学生はは怒ってよい!」と大書きされていますが、この本を読みながら、まさにその通りだ!と思いつつ読みました。
序章の「女子学生は世界中で闘っている」で著者は、「2019年は闘う女子学生にとって記念すべき年かもしれない」と語り、グレタ・トゥーンベリさんの行動に共感した163ケ国、400万人以上の世界の若者たち、また香港、韓国など女子学生が先頭で闘ってきたこと、日本国内も女子学生が闘ったことにまず焦点を当てています。日本でも反戦、環境、反原発、モリカケ、レイプ、セクハラ、医学部入学女性差別、就職差別など、理不尽はあまりにひどいから闘わざるを得ないのです。
著者は「本書では戦後女子学生が生きてきた歴史をさまざまなアングルから追い(中略)そこで理不尽なことに直面した時、彼女たちはどう闘ってきたのか」を描いています。
「女子学生」を対象、テーマとした理由は、第一に女子学生が入試、教育、就職で不利益を被ってきたからであり、第二は、最近女子学生が闘う姿を多く見かけるようになり、彼女たちを描きたいと考えたとのことです。つまり、「女子学生は差別され不利益を被った。そして女子学生は闘っている。これは本書を貫く大きなテーマである」とまず述べています。
本の構成は、第一章で「2010年代後半、女子学生の怒り」で現在の社会で起きた問題に、いかに各大学の女子学生が闘っているのかを具体的に実名で示しており、本全体のインパクトがまず明瞭に記されています。その例は印象的で注目に値するので後に記します。第二章では「女子学生怒りの源泉=『女子学生亡国論』の犯罪」60年代の社会、教育者、マスコミがいかに女性蔑視の封建思想かが示され、第三章から第十章までは、さまざまなアングルー戦後の学生運動、社会運動参加、男社会で生き抜いた著名人たちから70年代のキャンパスやスキャンダル事件、80年から90年代の「女子大生ブーム」「オールナイトフジ」への現役学生登場、女子学生急増、ミスコン、読者モデル、就職での闘いから女子学生の小説、映画、音楽など文化創造の担い手たちの紹介までー 歴史的に社会現象を振り返りつつ解説しています。
 敗戦後、女子学生の学生運動への参加もありますが、まだまだ「良妻賢母教育」や「女子学生亡国論」等男性中心の社会が続いていきます。それをかいくぐり、闘いながら、80年~90年代の男女雇用機会均等法が施行され、女性が社会進出を果たしていきます。しかし、男性中心に歴史的に構造化された日本社会とその思想的根本が変革されない限り、女性差別やセクハラは、より商品化され値段が付けられ、あるいは隠然とした差別や排除が今も「王道」のごとくまかり通っていることを本を読みつつ実感します。
1955年には18歳人口が168万2239人で、大学進学率は男子13.1%、女子は2.1%です。大学数は228校で女子大は32校の1万5千人という超上流エリート。2010年代の今では、マスプロ教育を経て、大学生数260万948人のうち、女子学生は118万3962人、45.4%に達しているそうです。
 私自身はいったん1964年に高卒で社会人として就職し、その後、1965年に教師を目指して夜間大学に入学し、働きながら大学に通いました。
会社の女性差別を含む社会の矛盾は根本的に社会政治革命抜きには変わらないと考え、革命を目指したので、「女子学生」というアイデンティティは私にはきっと薄かったと思います。
でも、第一章にあげられている女子学生たちの理不尽には屈しない、まっすぐに闘う姿勢は、自分の初心を振り返りつつ、とても共感しました。しかも、当時の野党を含む政治的な反政府勢力の広がりの中で闘うよりも、今の個人から出発した主体的な行動の難しさを乗り越える勇気ある行動に今後の可能性を見ます。
 その一例が第一章の国際基督教大学の山本和奈さんの怒りと行動です。
「週刊SPA!」2018年12月20日号の「ヤレる女子学生RANKING」として、大学の実名をあげてセックスしやすい女子学生を紹介した記事に対して「いてもたってもいられなかった」と衝撃を受けたのです。
すぐにSNSを駆使し、同記事の撤回と謝罪、女性軽視や差別用語の使用をやめることを要求する署名を、3日間で2万6千筆以上集めたとのことです。 
あわてた「SPA!」編集部の「煽情的表現のお詫び」に対し、山本さんと賛同者は「論点がずれている」と編集部に面会を求めます。「編集部の一人を説得することも出来なければ、社会を説得することは出来ない。逆に一人が説得できたらみんなに伝わるんじゃないでしょうか」と語っています。
編集部は完全に説得され、逆に海外在住経験のある彼女らからセクシャルな記事のアイディアを提案されたと話しています。
国際基督教大学同窓会は、この山本さんの行動に「大学および同窓会の魅力度、知名度を高めることに貢献した」として表彰しています。
2015年にも国際基督教大学は、安保関連法案反対でSEALDsとしてスピーチした女子学生にも大学側は、「民主主義、平和、人権を尊重する本学のリベラルアーツの理念を体現し、賞賛に値する」と賞を贈ったそうです。国連の原則に通じた大学側の姿勢は、今のソフトにファッショ化する日本で大切な堡塁の一つと言えます。
後にこの学生、山本さんはチリに滞在し、昨年10月のチリの大規模抗議デモの様子を伝えつつ、「日本は安全ですか?幸せですか?」と日本も同じ格差社会と問うています。
「日本でどれだけ大企業が税金を払っているのか。なぜ原発が世界で4番目に多いのか。なぜこんなにもギリギリで生きている人が多いのか考えてみて下さい。長年私たち日本人が茹でガエルのようにゆっくりと茹でられてきたからです。(中略)もし今の生活にまったく違和感がないのであれば、あなたは恵まれています。その分、あなたの行動、あなたの発言は何か変化をもたらす可能性があります。だからどうか声が届かない人の声に耳を傾けて下さい」と地球の向こう側からまっすぐな眼差しで訴えています。
若い日本人のそうした主体的な力は、やはり国際的な交流や国外から日本をとらえた時「日本の常識」のいくつもの非常識を知ることが出来ることから生まれています。自らの感性を深く問う誠実さが、日本の非常識を破る強じんな変革の兆しを育てているように思います。
 自分たちの60年代、70年代の「異議申し立て」のあり方との時代・社会の違いを振り返りつつ、これからの希望を描きつつ読みました。日本の女性、女子学生の歴史を分かりやすくまとめており、学ぶことのできる1冊です。
(2020年6月5日記)

【内容紹介】
早大教授(暉峻康隆)と慶大教授(池田彌三郎)が主張した『女子大生亡国論』から50年経って、はたしてそれがどのような道をたどったのか、女子大生&女子学生の(被差別の)歴史を追いかけた集大成。
大学生活、課外活動、社会運動、学生運動、メディアでの発信、ミスコンや読者モデル、芸能活動などをとおして、女子学生が社会とどう向き合ってきたか、そこで理不尽なことに直面したとき、彼女たちはどう闘ってきたか。その全貌をはじめてあきらかにする。

【目次】
序章 世界中で女子学生は闘っている。
第1章 2010年代後半、女子学生の怒り
第2章 女子学生怒りの源泉=「女子学生亡国論」の犯罪
第3章 女子学生、闘いの歴史――社会運動
第4章 女子学生の歴史①(1950年代、60年代圧倒的男社会のなかで生き抜く)
第5章 女子学生の歴史②(1970年代、事件はキャンパスでも市街でも起こった)
第6章 女子学生の歴史③(1980年代、90年代「女子大生ブーム」の光と影)
第7章 女子学生の歴史④(2000年代~、女子学生急増。その背景と神話)
第8章 ミスコンと読者モデル 華麗な舞台の実像と虚像
第9章 女子学生、就活での闘い
第10章 女子学生が文化を創造する

【著者プロフィール】
小林哲夫(コバヤシテツオ)
1960年神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。1994年から『大学ランキング』(朝日新聞出版)編集者。教育、社会問題を総合誌などに執筆。『神童は大人になってどうなったか』(太田出版)、『高校紛争 1969-1970』(中公新書)と『反安保法制・反原発運動で出現――シニア左翼とは何か 』(朝日新書)が大きな話題に。ほか『東大合格高校盛衰史』(光文社新書)、『ニッポンの大学』(講談社現代新書)、『早慶MARCH 大学ブランド大激変』(朝日新書)など著書多数。

価格 \1,980(本体\1,800) サイゾー(2020/05発売)

【お知らせ その1】
9784792795856

『「全共闘」未完の総括ー450人のアンケートを読む』
全共闘運動から半世紀の節目の昨年末、往時の運動体験者450人超のアンケートを掲載した『続全共闘白書』を刊行したところ、数多くのメディアで紹介されて増刷にもなり、所期の目的である「全共闘世代の社会的遺言」を残すことができました。
しかし、それだけは全共闘運動経験者による一方的な発言・発信でしかありません。次世代との対話・交歓があってこそ、本書の社会的役割が果たせるものと考えております。
そこで、本書に対して、世代を超えた様々な分野の方からご意見やコメントをいただいて『「全共闘」未完の総括ー450人のアンケートを読む』を刊行することになりました。
「続・全共闘白書」とともに、是非お読みください。

執筆者
<上・同世代>山本義隆、秋田明大、菅直人、落合恵子、平野悠、木村三浩、重信房子、小西隆裕、三好春樹、住沢博紀、筆坂秀世
<下世代>大谷行雄、白井聡、有田芳生、香山リカ、田原牧、佐藤優、雨宮処凛、外山恒一、小林哲夫、平松けんじ、田中駿介
<研究者>小杉亮子、松井隆志、チェルシー、劉燕子、那波泰輔、近藤伸郎 
<書評>高成田亨、三上治
<集計データ>前田和男

定価1,980円(税込み)
世界書院刊

(問い合わせ先)
『続・全共闘白書』編纂実行委員会【担当・干場(ホシバ)】
〒113-0033 東京都文京区本郷3-24-17 ネクストビル402号
ティエフネットワーク気付
TEL03-5689-8182 FAX03-5689-8192
メールアドレス zenkyoutou@gmail.com  

【1968-69全国学園闘争アーカイブス】
「続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このページでは、当時の全国学園闘争に関するブログ記事を掲載しています。
大学だけでなく高校闘争の記事もありますのでご覧ください。


【学園闘争 記録されるべき記憶/知られざる記録】
続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このペ-ジでは、「続・全共闘白書」のアンケートに協力いただいた方などから寄せられた投稿や資料を掲載しています。
知られざる闘争の記録です。


【お知らせ その2】
「語り継ぐ1969」
糟谷孝幸追悼50年ーその生と死
1968糟谷孝幸50周年プロジェクト編
2,000円+税
2020年11月13日刊行 社会評論社
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本書は序章から第8章までにわかれ、それぞれ特徴ある章立てとなっています。
 「はしがき」には、「1969年11月13日、佐藤首相の訪米を阻止しようとする激しいたたかいの渦中で、一人の若者が機動隊の暴行によって命を奪われた。
糟谷孝幸、21歳、岡山大学の学生であった。
ごく普通の学生であった彼は全共闘運動に加わった後、11月13日の大阪での実力闘争への参加を前にして『犠牲になれというのか。犠牲ではないのだ。それが僕が人間として生きることが可能な唯一の道なのだ』(日記)と自問自答し、逮捕を覚悟して決断し、行動に身を投じた。
 糟谷君のたたかいと生き方を忘却することなく人びとの記憶にとどめると同時に、この時代になぜ大勢の人びとが抵抗の行動に立ち上がったのかを次の世代に語り継ぎたい。
社会の不条理と権力の横暴に対する抵抗は決してなくならず、必ず蘇る一本書は、こうした願いを共有して70余名もの人間が自らの経験を踏まえ深い思いを込めて、コロナ禍と向きあう日々のなかで、執筆した共同の作品である。」と記してあります。
 ごく普通の学生であった糟谷君が時代の大きな波に背中を押されながら、1969年秋の闘いへの参加を前にして自問自答を繰り返し、逮捕を覚悟して決断し、行動に身を投じたその姿は、あの時代の若者の生き方の象徴だったとも言えます。
 本書が、私たちが何者であり、何をなそうとしてきたか、次世代へ語り継ぐ一助になっていれば、幸いです。
       
【お申し込み・お問い合わせ先】
1969糟谷孝幸50周年プロジェクト事務局
〒700-0971 岡山市北区野田5-8-11 ほっと企画気付
電話086-242-5220(090-9410-6488 山田雅美)FAX 086-244-7724
E-mail:m-yamada@po1.oninet.ne.jp

【お知らせ その3】
ブログは概ね隔週で更新しています。
次回は10月22日(金)に更新予定です。