イメージ 1
39年前の1969年1月18-19日は、東大安田講堂攻防戦の日である。
神田駿河台周辺では安田講堂攻防戦に呼応して、解放区闘争が繰り広げられた。有名な「神田カルチェ・ラタン」闘争である。

私は当時、高校3年生で大学受験の直前。テレビでは見ていたが現場には行っていない。
中学の友人は同級生と一緒に「反戦高協」の部隊で現場に行っていた。
その友人や、当時現場で闘った人から解放区闘争の様子を聞くと、やはりその場に居たかったという思いにさせられる。現場に居ないと「神田カルチェ・ラタン」は書けない。

秋山祐徳太子(注1)の本に「通俗的芸術論」という本がある。秋山祐徳太子の自伝的な本であるが、その中に1・18-19に関する記述がある。本を見たことのある人は少ないかもしれないので、少し長いがその本から引用してみたい。あくまでも「アーティスト」の目からみた「神田カルチェ・ラタン」ということを頭に置いて見てもらいたい。

【「真空地帯」はコルゲンコーワ】(土曜美術社発行「通俗的芸術論」から引用) 
『60年代末から70年代にかけて、東大安田講堂占拠を頂点に学園闘争は花盛りであった。花盛りと言うと不真面目にきこえるだろうが、絶対に学生自治会の存続など考えられなかった日大でさえ、学部占拠がつづいていた。
この中でノンセクト・ラジカルという派が大活躍をし、神田周辺は、カルチェ・ラタンと称して、その花が咲き乱れた。ぼく達の学生運動のころは、ヘルメット、ゲバ棒というものは存在せず、今から見ると古いスタイルで闘っていたものである。
ヘルメットもカラフルでセクトが1目で分かるように色分けしてあるし、セクト名も大きくなかなかデザイン的にきちんと書いてある。
「中核」というのも目立つけど「ML」というのもよく目立つ。それが一勢に神田カルチェ・ラタンにデモるとなると、人間というよりロボットが動き出すみたいだ。
(中略)
それはともかく、神田一帯には日大、明大、中大などがあり、とくに明大前からお茶の水にかけての通りなどは、連日学生と機動隊とのぶつかり合いがつづいていた。
その日はそれまでで一番大きな闘いになるだろうといわれていた。明大前のカルチェ・ラタンにはバリケードの山が築かれて、機動隊に応戦する構えができていた。機動隊の方も装甲車をくりだした。昼過ぎになると機動隊の大部分がジリジリとバリケード側に近づいてきた。学生側もゲバ棒で武装しながら近づいていった。
学生と機動隊との距離が30メートルくらいになったときに双方の動きがピタリと止まった。ちょうど真ん中のバリケードの山が双方の間に割って入った形であった。見ると緑色の人形がその天辺に立っている。コルゲンコーワのカエルの人形であった(注2)。手を両手に広げたような格好で立っている。そのとき、ぼくは<これだ!>と直感してしまった。
政治的、そして物理的関係の真っただ中に、エア・ポケットが現出していた。パロディとかナンセンスすら超越しているカエルはまったくの異次元にあるようにキ然と立っていた。
学生と機動隊との距離はなかなか詰まらない。ほんとうは双方、あのカエルのおかしさに見とれてしまって、攻撃を仕かけられないのではあるまいかと思った。
ぼくは双方ぶつかり合わないうちにその場を離れた。もし、学生も機動隊もあのカエルのために一勢に笑いころげて、今日はお互いに衝突をさけたとしたら、すばらしいことだと思いながら・・・。
しかしあの日、双方に負傷者が大勢出たという。あのカエルも人並みに怪我をしてしまったのか。それにしても一匹のカエルのオブジェが物理的次元にカエル空間を現出してのけたことは見事であった。
あれ以来ぼくの心の中には、ぼくのハプニングも、取締りにきたお巡りさんも笑ってしまうくらいでなければ真のナンセンスたりえないのだ、という思いがある。』

秋山祐徳太子は当時、全裸儀式集団「ゼロ次元」とともに京大教養学部で反博(反万国博覧会)全裸儀式を決行するなど、ハプニングを行っていた。ポップ・アーティストの目から見ると「神田カルチェ・ラタン」もカエルのオブジェに集約されてしまう。
現場の状況をリアルに知りたい方は、ネットで公開されている「中央大学新聞復刻版 昭和44年1月21日号」を参照してください。
http://www.asahi-net.or.jp/~gr4t-yhr/back1/chu_09.htm

(注1)秋山祐徳太子:ポップ・アーチスト。昭和50年、54年の東京都知事選挙に「保革の谷間に咲く白百合」というキャッチフレーズで立候補。当時、ストリーキングなど路上ハプニングも。ホームページ「明大全共闘・学館闘争・文連」のエピソード1969、新宿歌舞伎町の項にも関連記述があるので見てください。
(注2)薬局の店頭に置いてあった「コルゲンコーワ」のマスコットキャラクターのカエル。写真は小さいマスコットのカエル。