イメージ 1
(No285-1の続きです)

「朝日ソノラマ」の選択は必然であったかもしれない。とくに大学闘争の提起した問題を、音と活字で掘り下げ、記録することは、新聞、雑誌、テレビ、ラジオといった、どんなジャンルのマスコミでもできないことである。あえて、それが可能なメディアを探せば映画でしかあり得ないといえよう。
こうしたタイプの雑誌は、現在、世界で同誌とソ連の「クルガゾール」誌の2誌しかないのが現実である。「クルガゾール」誌の場合、ラジオ・テレビ国家委員会の直営であり、民営では「朝日ソノラマ」だけといことは、非常に経営がむずかしいということにつながるかもしれない。
だが、その二元的機能の重要性は、いま立証されたのである。激動する現代の、音と活字による「歴史の証人」としての存在を期待したい。』

この「朝日ソノラマ」のソノシートで、東大安田講堂の最後の解放放送を聞いていた記憶がある。ソノシートはレコードの衰退と共に消えていき、「朝日ソノラマ」も出版事業で会社を続けていたが、2007年に廃業した。

次はレコード。日大闘争のレコードがあった!という話。
「今度はレコードで登場 実音!日大闘争の記録」【毎日新聞1969.7.12】(引用)
『記録集から写真集、ソノシートまで現れた“大学紛争もの”だが、とうとう今度はレコードが登場した。
ビクターが発売した「実音!日大闘争の記録」(30センチLP)(写真上段)。レコードは「反逆のバリケード」でもおなじみの一人のノンポリ学生のK・T君が、この闘争に参加するようになった動機や経過を語るナレーション(小山田宗徳の朗読)から始まり、秋田明大・全共闘議長の獄中インタビュー。
また、いまなお潜行している田村正敏・全共闘書記長の「地下からのメッセージ」など、どうして収録したか“秘中の秘”という録音もはいっているが、なんといっても圧巻は。レコードのほとんど、50分をしめる「9・30大衆団交」。
古田日大会頭ら理事者側と学生たちのやりとり、講堂もゆらぐばかりに埋めつくした学生たちの怒号やヤジ、シュプレヒコールが熱ぽく盤面にたたき込まれて、日大闘争の最大のヤマ場にふさわしい迫力を感じさせる。そして、あれから1年近く日大の体質がどれだけ変わっているだろうかと、聞く人を再び考えさせるのだ。
このほか4・28沖縄デーの実音も入っているが、ディレクターの市川氏は「日大を選んだのは、ほかの大学のようにイデオロギー重視の闘争ではなく、人権闘争といわれるように焦点がはっきりしているから。このレコードで音だけが持つ事実の重みを分かってもらいたい」という。
学生運動の実態が音になるのは初めてだが、活字から写真、そして音とエスカレートしてきた“大学紛争もの”の姿は情報化時代の現代の一つの側面を表しているようだ。』

当時、こんなレコードがあったことなど知らなかった。値段が1,750円。当時、ラーメン1杯が70円の時代だから、貧乏学生にはちょっと手が出ない。
「実録」ではなく「実音」というタイトルも面白い。このレコードには、たぶん日大全共闘関係者が関わっていたと思われるが、レコードの音を聴いてみたいと思う。

【付 録】
今回のテーマはソノシートということで、家の中を探したら数枚のソノシートが出てきた。
そのうちの何枚かの写真を掲載する。(写真2段目・3段目・4段目)
このソノシートは、1972年に漫画家の赤塚不二夫が発行した「まんがNo1」という雑誌の付録である。

写真2段目の2枚は1973年4月号の付録。
「ホイ!」という歌の表面(左)と裏面(右)。歌っているのは三上寛、作曲は山下洋輔。絵は長谷邦夫。
写真3段目は1973年2月号の付録。
「ペニスゴリラ アフリカに現る!」という曲。演奏は山下洋輔トリオ。絵は杉浦茂。
写真4段目の2枚は1972年11月発行の創刊号の付録。
「おまわりさん」という曲の表(左)と裏(右)。歌手は少年Aとなっているが、三上寛。絵は佐伯俊男。

このメンバーといい、ソノシートの絵といい、時代を感じさせる。当然、曲はレコードなどで発売されていないので、このソノシートを聞く人だけが聞ける曲である。
この「まんがNo1」の付録のソノシートには、井上陽水が歌っている曲もある。
1973年3月号の付録。アルバム「氷の世界」に入っている「桜三月散歩道」の「まんがNo1」ヴァージョン。歌詞とせりふが少し違う。
持っていた「まんがNo1」は、引っ越しの時に古本屋に売ってしまったので、今は手元にはない。レコードプレーヤーが無いので聴くことはできないが、ソノシートだけが手元に残っている。
この「まんがNo1」をCDに収録した『赤塚不二夫のまんがNo.1 シングルズ・スペシャル・エディション』というものが数年前に発売されているので、曲を聴きたい方は、このCDを買えば聴くことが出来る。

(終)