2010年に作成され、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭などで上映されてきた映画「革命の子どもたち」が7月5日(土)から「テアトル新宿」で上映されている。
このブログでも2回にわたって宣伝してきたが、初日(7月5日)に映画を観に行ってきた。雨模様の天気だったが、観客が続々と詰めかけ、上映前のロビーは観客であふれた。
映画終了後、映画に出演している重信メイさんと映画監督の足立正生さんの舞台挨拶があった。今回は、その舞台挨拶の様子を掲載する。

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「革命の子どもたち」初日舞台挨拶 2014.7.5 (テアトル新宿)

司会:配給会社「太秦」小林氏
『この映画を知ってから公開するまでに3年くらいかかりまして、この作品は、この映画館をホームグラウンドにしていました若松孝二さんが「やれ」ということで、ずっとやっていたんですが、その間に勝手にお亡くなりになりまして、その後、テンションも落ちたりしたんですけれども、ようやく皆さんのご協力のもと、ここに初日を迎えることが出来ました。本当に感謝申し上げます。(拍手)
ご紹介したいと思います。本作品の出演者でもありジャーナリスト、プロデューサーでもある重信メイさん、どうぞ!(拍手)(パンタさんの歌とともに登壇)
そしてもうお一方ご紹介したいと思います。映画監督の足立正生さんどうぞ!(拍手)
まず、初日を迎えた感想をお一人ずつお願いできますか?』

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重信メイ
『皆さん、こんなに大勢来られるとは思わなかったので、立ち見だと教えてもらってびっくりしました。本当により多くの人に、ちょっとでも違うアングル、違う角度でこの話を見ていただきたいと思っていたので、本当に有難うございます。』


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足立正生
『元々私も映画を作っているので、非常に真面目で穏やかな記録的な表現を出して面白いかなとは思います。映像の中で語っていることなんかよりも、更につらい目に合わせたメイちゃんがここまで大人になっているんですから、私は何も発言しなくてもいいのではないかと。以上です。』(拍手)

司会
『実はこの映画館は日本映画専門映画館でして、ここに至るまでにアイデンティティの問題がありまして、アイルランドの監督だから日本映画じゃないんじゃないかというので、メイさんは日本人だから50%くらい出ている、足立さんが5%くらい出ているからこれは日本映画だということで押し切りまして、最後は若松さんのホームグラウンドということで、ようやくここに至ったということです。僕は若松さんのホームグラウンドで足立さんをお迎えするのは非常に感慨深いものがあるんですけれども、あまり関係ないですか?』

足立正生
『あんまりない。(笑)若松が最後の頃、ここでいろんなレトロスペクティブみたいなこともやりたいと、それに近いことをやったりしていましたけれども、むしろこの映画館がもう少し頑張ってくれれば、若松さん、あるいは私ら、そこからも若い監督がいっぱい出て行けるので、もっともっと若い人に門戸を開くような映画館になって欲しいとずっと思っていました。だから、今日、この映画を上映できて、見に来ていただいた人たちに、そういう映画館として育ててくれることをお願いしたいと思います。よろしく。』(拍手)

司会
『この映画の内容についてお話をさせてもらいたいんですけれども、メイさんと今までに何度か会って、いつもにこやかなメイさんなんですけれども、このドキュメンタリーを見て改めて思うことは、子どもの時から生命の危険を肌で感じながら生活していられたんだなと、僕らの想像力の及ばないところがあって、それは具体的はどういう風に感じていたんですか?』

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重信メイ
『正直言って、生まれた時からそういう状況だったから、突然大人になって変わった訳ではないので、ストレスというようなものではないけれども、周りの人とはちょっと違うなというのはいろいろ感じましたし、大人と離れる度に、その大人とは二度と会えないかもしれないという思いを持ちながら、私の母も含めて「さようなら」と言うのが辛かったけれども、そういう風に生きないと逆に生きていけないというのがあったので、しょうがないなという感じでした。』

司会
『それで、メイさんの本を読んだりすると、一人のお父さんではなくて、何人ものお父さんがいた。足立さんもその一人であったというような、どういう風な関係でお話をしていたり、まさか叔父さんと言っても嘘っぽいでしょうし、どういう風に接していたんですか?足立さんとメイさんは?』

重信メイ
『本当に家族のような感じで、例えばある人は叔父さんみたいな感じだったりするし、ある人はお父さんみたいな感じだったりするし、ある人は叔母さんみたいだったり、ある人は母みたいだし、本当に大きい家族があるような感じでいたんですけれど。』

足立正生
『少し暴露すると、いろんな仲間が力を出し合って、メイちゃんたちを育てるようにはしているんですけれども、メイちゃんの側から見れば、いいお父ちゃん、悪いお父ちゃん、俺なんか何も付かない単なるちゃん、というような、彼女の目から見れば、(彼女が)持っているものがあって、そこから呼び名を付けているんですね。その呼び名を付ける付け方が非常に感性鋭くて、何でいいお父ちゃんなのか、何で悪いお父ちゃんなのか、俺みたいに何でちゃんだけなのかとか、そういうことがあって、今言ったようなストレスなんて、彼女自身はそればっかりだから、実は感じていなかったんじゃないかと思いますね。』

司会
『いつも死が隣り合わせという中で、向こうの世界で明らかに日本人と異質だったんじゃないかと思うんですよ。その中で足立さん自身も危険を感じていたでしょうし、その中でどのように普通の生活を送っていたのかということを聞きたいんですけれども。』

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重信メイ
『家の中では普通に家事をするお当番とか、料理を作るお当番とか、いろいろとその日によって子どもの宿題を手伝うお当番とかあったんですけれど、その代わり、私たち子どもたちが学校に行ってたり寝ている時は、他の政治的な仕事をするような感じだった。
本当に若い頃は集団的に生活をしていたけれど、それだと目立ちすぎるので、アジア人らしい人たちがグループで住んでいるとおかしいから、そのうちどんどん分かれて住むようになったんだけれど、周りの人に一生懸命日本人じゃないと説得するのが大変でしたね。
違う国籍の人だと言ったりとか、何でこんなに大勢の人が一つの家の中に住んでいるのかということも、目立たないようにストーリーを作らないといけないし、外と向き合った時に工夫をしなければいけないところがありましたけれど、でも家の中では普通の生活の中でも私たちは特別な生き方を持っているから、それはそれなりにちゃんと向き合わないといけないから、毎日、身のまわりに危険があるかないか皆で確認するために、夕食の後に報告をするとか、普通の家族だとたぶんないだろうなというのがあるけれども、それ以外ところでは本当に家族みたいにいろいろとやっていました。だから両方あった。普通に家族っぽく生活しているところもあったし、それなりに私たちが危険の中で生きているということもあったから、子どもも入れた報告会みたいなものもありました。』

司会
『若松さんにこの映画をやれと言われた時に何からと考えたんですね。やっぱり重信房子さん、赤軍、リッダ、いろんなことが3分の1とか4分の1とか1面以下みたいな形で、このまま定着すると、本当にそれだけしか残らないんじゃないかという気があって、何が本当かはさておいて、本当のことを探る転機になればいいかなと思って、それでやれたみたいな気がするんですけれども、足立さんはその辺はいかがですか。』

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足立正生
『若松はいろんな思いがあって、そう言ったんだろうというのは分かります。もう一つ暴露すると、メイちゃんが生まれた後、国籍をどうするかという問題があった時に、彼が毎年のように来ていたんですけれども、メイちゃんにも会った時があったんです。その賢さや何かを見た後、よし決めた、彼女は俺の娘にする、つまり養女にする。アラブの女性に産ませた子どもだから連れて帰る、そういうようなメイちゃんの置かれている境遇なんかに同情して28年一緒に過ごしたというのがあるから、マインホフの子あるいは房子さんの子のメイちゃんということで、万感の思いがこもっていただろうというのはありますね。もちろん柄は悪いけど自分の娘はちゃんと育てているから、それもいいかなと思ったりしましたけれど、結局それは実現しなかった。そんなところです。』

重信メイ
『確かに若松さんは、私なんか若ちゃんと呼んでいたんですけれども、結構、お父さんの一人のような方だったので、そういうところもあったんじゃないかな。そういう思いもあって、28年間中東で生まれ育つというのはどういうことかを日本の方々に伝えるいい機会だと思ったんじゃないかなと思います。』

司会
『僕は「Children Of The Revolution」といのが原題なんですが、それに邦題として「革命の子どもたち」というのを付けて、ベティーナ・ロールさん、すごく対照的は母親像を抱いているなと思ったんですが、メイさんはベティーナさんの母親に対する印象というのは。』

重信メイ
『私はベティーナさんも、ベティーナさんのお母さんのことも映画を通してしか知らないんですけれども、キャラとしては私の母とはちょっと違うんじゃないかと思えるところがあります。もっと気が強い、私の母も強い人でしたけれども、何ていったらいいのかな・・ヨーロッパ的、西洋的な強い女性というのがありますよね。、私は日本的な強い女性と違ったキャラクターだと思うんですけど。
足立さんはひょとして2人とも知っているから、足立さん知ってますよね?』

足立正生
『誰を?』

重信メイ
『マインホフさん。』

足立正生
『そういうのはあまりここでは・・・』(笑)

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重信メイ
『私はその人を知らないから、それと私が生まれて直ぐくらいの時に死んでいますので分からないですけれども、一つこの映画を観て思ったことは、何で私とベティーナさんの意見がこんなにも違うんだろう、と不思議だったですね。もちろん生きている環境が結局は違った。母親のイデオロギーが似ているかもしれないけれども、違う生活をしてきた。
彼女は中東に向かうはずだったけれども、結局は行かなかった。それと母親を批判するお父さんと一緒に育った。それだけではなくて、非合法ではなくて合法的に育ったし、そういうものもあったけれど、私はそれだけが違いではないと思ったんですね。本当に考えて思ったのは、2人とも母と普通の生活ができた訳ではないけれど、私と彼女が違うところは、一緒にいる時間が少なかったとしても、私の場合はずっと母親に会うことも出来たし、いろいろ疑問に思ったこととか、聞きたいこととか、何でと思った時には聞く機会だってありましたし、そして答えもきちんと戻ってくることもありましたし、そして母の愛情もそうですし、周りの他の家族の人たちの愛情も本当にいっぱいもらって育った。その中で私はこの映画のように思えるようになったと思うんです。ベティーナさんは、母親の愛情を十分に受ける前に、しかもいろんな疑問に対しての答えを貰う前に母を亡くしてしまった。そのギャップが、疑問とか不満とかの感情に変わってきたんじゃないかと思ったのと、それでもう一つ思ったのは、親子の愛情というのは当たり前のことじゃないんだなと思った。今までは親子というのは、当たり前のように愛情があるはずだし、更に大変な中で生きて行くと、絆というのが当たり前のように強くなるものだと思っていたんだけれども、そうじゃなくて本当に努力があってからこそ、愛情というものが生まれるんだなと思った。
当たり前に生まれつき出てくるものじゃなくて、例えば私の場合は母親の愛情とか周りの人の愛情が、みんな大変な中でも努力して、この子はうまく育つようにと、子どものことを第一に考えていることが本当に伝わっていたんですね。何を決めるにしても、例えば移動を決めるにしてもまず学校をどうするかとか、本当に子どものことを一番最初に考えているというのは感じてくるんですね。それもやっぱり努力があって愛情が伝わってきたから、子どもも愛情を感じることができたと思うので、私も学んだことの一つなんですが、愛情というのは当たり前のように伝わるものではないから、自分も人にちゃんとコミニケーションする努力をしないといけないと思いました。』

司会
『当然、足立さんもすごい愛情を注いでいたと思うんですけれども。』

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足立正生
『今、彼女が言ったこととあまり違わない問題ではあるんだけれども、メイちゃんと僕らが一緒に住んでいたということもあるんだけれども、それはほんの20分の1くらいであって、他の軍事基地に居たりいろんな仕事をして、彼女と一緒に居られる時間というのは非常にいい時間なんですね。ですから、そういう意味のラッキーな出会いの部分だったというのが一つと、僕なんか既に娘が3人いた後に姿を消して合流しているんですが、他の人たちは皆学生運動上がりの若い人々で、出産とか子育てとか全く分からない人たちですよね。ですから、そういう仲間と一緒にメイちゃんを育てる、あるいは他の子たちも産まれたりして、それを育てるというのは一つの基本的な、いくら革命家、テロリスト、過激派と言われても、基本的な生き方の中で問われる問題を、メイちゃんを通して出会うということをやっていた訳です。
ですから、メイちゃんにとっては、それが非常にかけがえのない愛情と見えたんだろう、あるいはマインホフの娘はマインホフを敬愛する、あるいは以前からの仲間たちがしっかりと支えて育てたということも知っています。それからマインホフさん自身は、強さというよりも、実際に社会の問題そのものを受け止める、そこで実行するというタイプだと、学生の頃から知っている2人の老いた女性が言っていましたけれども、激しさというのはあたかも脳腫瘍を取って鉄板を入れて人間が変わったんだという、たとえそいういう要素があるにしても、鉄板を入れて変わってそれから始まって、腦がおかしいものを持てないのは分かるんだけれども、心理的な変化があったんじゃないかと、どうでもいい分析をこの映画の中でもしていますけれども、そういう具合に思おうと思ったら思えるんですね。
だからメイちゃんの母親の房子さんでも、決断したから中東に行ったし、決断したからリッダ闘争の死んだ人たちのものも引き受けようとしたし、というように、強さとかいうものは、メイちゃん風に西洋的、東洋的という言い方もあるかもしれないけれども、むしろ、自分が背負っていたものをそれなりに強くやろうとしたんだなと思います。
それからマインホフの方は、そういう意味で言えば母親の愛情というものは分からなかったということを映画の最後に言っていますよね。つまり、もちろん政治上の路線上の問題は、西ドイツと日本の私たちの違いとかいろいろありますけれども、本当は分かっていなかったんだ、子どもを産んで分かった、それが全ての回答になっているんですよね。
だから、僕も娘を見て、娘たち立派に育っていて、親はいなけりゃ子は育つというのは世界の真実だと分かったんです。でも、親がいても育つ子もいる訳でしょ。その例がここにあると僕は思っているんです。
マインホフのこと、メイちゃんとほとんど変わりがないと、あるいは変わりがないんだけれど、そういう時分のお前らがかつてやった過激派の闘いじゃなくて私たちの世代は私たち世代の生き方の中で身につけた戦い方をしますよ、と両方言っている訳だけど、古い方の世代から見れば、愛情というのはメイちゃんが言っているように、ワシらはラッキーでメイちゃんと愛情の関係をしっかり持ちながらやれたけれど、そうじゃないところの方が大半な訳ですね。その程度の違いはあるのかなと。だけど、マインホフの子が最後に、子ども産んでよかったと言ったので、私もちょとウルウルなって、今でも目が濡れているんですね。以上。』

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司会
『最後に質問なんですけれども、重信さんが捕まった時、ニュースで日本全国ほとんどの人がご覧になっていると思うんですが、それをまた映画の中で見た時に、すごくひどい中傷があったような記憶があるんですね。でも、メイさんは、我々と全く違う、生きていることが分かったというようなことをおしゃっていましたよね。だから全然違うんだなというか、僕たちの鈍感さを恥じたということろがあるんですけれど、その話を聞かせてもらえればと思います。、』

重信メイ
『もちろん逮捕されることはとても残念なことですし、ああいう形で未だに、私からすると無罪の、本当に証拠もないまま20年も独房に入れられるということはすごく不正義で残念なことだと思うんですけれども、今まで人生の中で心配していた暗殺とか拷問というものがなかっただけ、ホッとした。もちろん、逮捕された時の報道が、ある友人の方から電話がかかってきて、ひょっとして貴方のお母さんが逮捕されたかもしれないという話が耳に入って、その日、わずかに映るNHKニュースをずっと見ていて、悪い映りのテレビあるじゃないですか、ああいう感じでNHKで映ったんですね。でも、私は母だとすぐ分かったんだけど、本当に難しい気持ちでしたね。
とうとう逮捕されてしまった、私がずっと恐れていたことが起こってしまったという本当の悲しい思いと、でも殺されなかったという思いの難しい複雑な感じでしたね。』

司会
『それでは今日はマスコミの方が来ていらっしゃいますので、パネルを囲んで立っていただけますか。』
(映画のポスターのパネルを囲んで重信メイさんと足立正生さんがマスコミ用の撮影に応じる)

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司会
『握手をして欲しいというオーダーが入っていますけれど。』(笑)
(パネルの前で2人が握手)

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司会
『最後に一言ずつ、あと3週間ほどやりますので、その間にまた足立さん、メイさんにも登壇していただきますので、最後に一言メッセイージをいただいてシメたいと思います。、』

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足立正生
『題名が「革命の子どもたち」となっているように、年取った私たちのことではなくて、今、生きている人も死んでいる人もいろいろあると思うけれども、メイちゃんたちの世代を継いだ人たちが、どういう思いでどういう具合に生きようとしているのかというのをテーマにしようとした映画でもあります。そういう意味で、今後ともメイちゃんをよろしくお願いします。』(拍手)

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重信メイ
『私は映画の中でも言いましたけれど、メディアの関係で今仕事をしているので、言いたいことは、メディアに一方的に、日本みたいに一緒くたの報道の仕方とか、意見というものが流れる中では、やっぱりどこか違うものがあるんじゃないかという風に、この話だけではなくていろんなこともそうですけれども、世界の情報も日本の情報も疑いの目を持ってみなさんにこれから見ていただきたい。このメディアが言っているんだから正しいんだろうというのではなくて、言っていないこともいっぱいありますし、言い方も違っていたりしますし、いろいろあるので、本当にみんなで一緒に視野を広げるようなきっかけになる、いろいろと自分からもすることもあるようにしていただければいいなと思います。
ありがとうございました。』(拍手)

司会
『どうもありがとうございました。盛大な拍手をどうぞ。』(盛大な拍手)

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舞台挨拶終了後、メイさんは映画のパンフレットを買った人たちにサインをしていた。サインを待つ人が長い列を作っていた。

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【映画「革命の子どもたち」絶賛上映中!】

詳細は以下のサイトでご覧ください。

革命の子どもたち公式サイト

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