今回も「朝日ジャーナル」で読む1970年代シリーズ。
1971年3月5日号「朝日ジャーナル」の文化ジャーナル欄の記事を掲載する。私も持っているが、「全共闘機関紙合同縮刷版」に関する記事である。

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【60年代学生の血肉の声】朝日ジャーナル1971.3.5
   ―「全共闘機関紙合同縮刷版」出るー
「今、闘いのメディアとしての全共闘機関紙はないけれども、このことは、われわれが今日の闘いにおいて、闘いのメディアを必要とする条件を自己に突きつけていることに他ならない」。そして、残された遺産が全共闘運動の実体ではなく、形骸化としての機関紙であるのはきわめて残念、と全共闘機関紙縮刷版編集委は、「はじめに」のなかで語っている。

<消えた闘いのメディア>
この縮刷版購読申込みを訴えるビラは、各大学全共闘機関紙は68、69年の激しい闘いの中から必然的に生まれたが、「現在に至っては残念ながらほとんどが休刊あるいは廃刊となり、多くの人々に読まれることもなく土に埋もれて行こうとしております。」と述べ、現状況を真剣に考えるすべての人々に、この1冊を末永く利用していただきたいと呼びかけている。
全共闘運動は、いま、楽しく集まって厳しく散ると約束した言葉どおり、1冊の縮刷版を日本の70年代初頭に残して、正常化をひた走る大学生140万人の心の内に潜入した。多くの政党政派の機関誌紙は、いまなお巷間にあるが、自発的個別大学闘争の具体のメディアは、ついに消えた。
この「全共闘機関紙合同縮刷版」の出版元「全共社」のスタッフは、1年まえに秋田明大の「獄中記」をつくった数人の日大生。限定版二千部。200ページ、定価二千円。

<世に残した重要課題>
所収される全共闘機関紙は、東大の「進撃」京大の「STRUGGLE」日大の「反逆」と「闘う全共闘」、そして京都府立医大の「バリケード」および立命館大の「CONTESTATION」、さらに日大全共闘文理闘争委の「文理戦線」と、日大教員共闘委の「戦砦」および全国全共闘連合書記局発行の「全国全共闘」の計9種類。日大関係が4種あるのは日大闘争の厚みと激しさを物語っていようか。
最も息長く続いたのはやはり「進撃」(68.11.9~70.2.27)で、69年1月21日の号外をいれて19号まで。
以下「STRUGGLE」(69.2.10~69.9.11)が10号まで、「反逆」と「闘う全共闘」は(それぞれ68.9.12と69.4.23に)創刊号を出したのみ。「文理戦線」(68.9.12~69.4.28)は69年1月18日の号外を含めて5号。「戦砦」(69.3.19~70.4.20)は10号まで。「バリケード」(69.4.1~69.7.21)は8号、「CONTESTATION」(69.6.28~69.10.10)が2号、そして「全国全共闘」は連合結成の69年9月5日号から70年1月17日号までに3回出している。
最も早いのは、日大の「反逆」と「文理戦線」の69年9月12日号であり、最も遅くまで出し続けたのはこれまた日大教員共闘の「戦砦」であり、70年4月20日号を持って終わる。70年2月に「進撃」は消え、1月には「全国全共闘」も休刊となる。
他はすべて69年秋の佐藤訪米阻止闘争前後に力つきている。

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<散った狂人たち>
だが、全共闘機関紙群は、わずか2年の間に多くの重大な問題を提起し、それらを永続連続革命の課題としてすべて未解決のまま世に残した。「進撃」創刊号は主張に、東京「帝国主義」大学打倒を掲げ、医局講座制打倒→医療管理体制破壊→新たな人民の医学医療の確立のラインを明示して、政府・独占に奉仕する官僚・技術者を養成する大学権力への挑戦を宣言した。
青年都市計画者連合の「闘いの原点」(創刊号)、「現代社会とテクノラート」(2号)、「現代科学とイデオロギー」(3号)、「戦後科学者運動論」(4号)、「権威としての現代科学」(4号)、「人文科学が首を晒すとき」(7号)の諸発言は、まさに今後の問題として生きている。
また、自己否定の内的外的契機を最初に切開してみせたコラム「砦の狂人たち」(3号)や、号外に載った「解放講堂からのアピール」、そして藤堂、西村、折原、菊池、戸塚、石川、和田の7人の教官を囲んで行われた千人の討論集会「もはや退路は断たれた、更なる自己変革を!」(8号)さらに「進撃」という闘いのメディアの自己切開を通して現代マスコミの論理に「死を!」と迫った「革命のメディアからメディアの革命へ」と題する宣言(11号)、あるいは自己否定のスローガン化を叩いて、その戦略の実践中身を追及した駒場共闘討論会(13号)などいずれも記念碑的なものとなろう。

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一方、「STRUGGLE」は、京都の反大学運動の自己学問能力の収奪という論理から、自然成長性の全共闘を「パルチザン遊撃軍団=共産主義共同労働団」の方向へ止揚させる構想を一貫して追求し、「文理戦線」は、反体制学問探究のコミューンとしてのフリーダム・ユニオン(学生による大衆的学問獲得自由組合連合)実現をバリケードの中に模索する。


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「文理戦線」5号1面の「敵を恐れることはない。せいぜい君を殺すだけだ」という言葉は、中村克巳君の死で真実となった。
この縮刷版は、60年代の歴史を先端で語る資料として、あまりにも生々しいベトナム戦争下の日本学生の血肉の声を伝えている。

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この「全共闘機関紙合同縮刷版」に掲載された全共闘機関紙は、以下のホームページの「全国学園闘争図書館」コーナーで全て見ることが出来ます。

「明大全共闘・学館闘争・文連」