沖縄の辺野古をめぐる情勢が緊迫する中、明大土曜会のメンバーが7月13日から15日まで沖縄を訪問した。沖縄では、現地で活動を続けているO氏に案内と説明をしていただいた。
8月4日に開催された明大土曜会で、その報告があった。以下、明大土曜会メンバーの沖縄現地訪問レポートである。
なお、訪問後、翁長知事の逝去や辺野古の土砂搬入延期など、情勢が変化しているが、このレポートは8月4日時点のものであることを念頭に置いて読んでいただきたい。(写真はO氏の沖縄報告から転載させていただきました。)

【沖縄現地訪問レポート 2018.7.13~15】
この7.13から7.15 、Oさんと沖縄でお会いし、いろいろ案内していただきました。Oさんは、1970年に沖縄現闘として一橋大学から沖縄に渡り、48年の在沖縄です。
 Oさんと一緒に読谷村の反戦地主、Cさん経営の民宿に泊まりました。Cさんは沖縄海邦国体で、日の丸を焼き捨てました。
 このあとすぐに右翼のCさんへの脅迫電話、Cさん自身や経営するスーパーへの襲撃、村役場への爆弾脅迫電話、読谷村集団自決のチビリガマ平和像の破壊とヘイトとレイシズム攻撃を受けています。
 この時は読谷村の村が一緒になってCさんを守ったそうです。
日の丸を焼き捨てた男がやっている民宿というブログが韓国で流れているそうです。私たちが泊まった14日は韓国から三名の人が泊まりに来ていました。
 1996年には読谷村の「像のオリ」にある土地の返還を求め米軍用地特別措置法を違憲として最高裁まで戦いました。その前は、沖縄大学自治会委員長として72年の復帰闘争を戦っていました。五年前から東本願寺派僧侶、反ヘイトの「のりこえネット」の共同代表もつとめています。
辺野古の抗議活動封じー7.14深夜シュワブ前に新たな柵設置
 7.14深夜、キャンプシュワブ前のテント村がテントごと撤去されました。
そして抗議行動の座り込みスペースに「柵」が設置されそのスペース空間をゼロにしようとしています、
同日普天間基地のフェンスの横断幕やステッカー等の撤去勧告が出されました。
辺野古ー普天間への同時弾圧です。辺野古土砂投入予定の前日の8.16には大きな県民大会が開催されます。
「沖縄防衛局発表、8月17日からの辺野古護岸土砂投入体制に入る
(7.15沖縄タイムス記事)
7.14深夜シュワブ前の工事用ダンプ搬入ゲート前に新たな柵を設置、座り込み抗議行動のスペースをなくすることが目的。歩行者用通路は残すが、柵は国道側に大きく張り出す形になった。」

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(キャンプシュワブ前写真)
13日午後には14日土曜のダンプ搬入はないので、座り込みは3連休で中止の連絡がSNS等で流れていた。14日夜11時半、抗議市民の不意を打つかたちでの柵設置となった。
 14日午前中、Oさんの案内で辺野古現地へ。シュワブ前のテント村には約5名の常駐者のみ。警察はおらず、国道事務所の職員が数名だけだった。
(シュワブ前で旧明大生協職員、経産省前テント村に常駐し、2015年から辺野古に来ているHさんとお会いする)
 海上抗議の拠点になっている辺野古のテント村前で、辺野古新基地建設の全体図を手元にして、在沖縄48年のOさんから工事の進行や問題点についていろいろお聞きする。
同日、普天間基地のフェンスに貼り付けていた横断幕やステッカー等も次から撤去との警察の警告があったそうだ。辺野古と連動した弾圧が強化される。
15日午後、県庁前で辺野古弾圧抗議の緊急座り込みが行われた。市民側はこの7.15から5日間の県庁前座り込み抗議活動に入る。
土砂投入は8.17予定。8.11か8.16に土砂投入反対の大きな県民大会(オール沖縄)が開かれる。

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(全体図写真)

【報告書】
1.辺野古新基地建設の全体図と工事の進捗度合いと問題点
1)辺野古米軍新基地建設事業は、仲井真前沖縄県知事が2013年12月末に埋立を承認して以来、すでに四年半以上が経過した。2014年夏から沖縄防衛局は本格的な護岸工事を開始した。2017年秋からシュワブ沿岸には大型クレーンが立ち並び、フロートで大きく囲われた海では、護岸作業が行われている。
2)新基地総面積205ha、内埋立160ha(内、辺野古漁港周辺5haは作業ヤード)。海上埋立5年、滑走路・陸上施設5年の計10年とされる。護岸総延長は7257m、現在は浅瀬のK4(傾斜)護岸が中心で長さにして全長の約6%の進捗。護岸工事は外海と埋立地区を切り離すために行われている。
3)8月17日土砂投入予定の沖縄防衛局発表は、K4護岸の約100m弱の部分である。簡単に工事に着手できる浅瀬の辺野古K4(全長1029m)護岸造成はほぼ完成したが、これは埋立の実績を早く作り、県民の諦めを誘うため。
4)埋立予定の大浦湾には辺野古ダムから流れる美謝川が流れ込んでいる。せき止めて埋立外に流さなくては、埋め立て工事は出来ない。現状では美謝川の流れ切り替えのメドは立っていない。
5)沖縄県では特定外来生物の侵入防止のための条例が2015年から施行されている。県外からの埋立土砂にも大きな壁がある。 
6)今後は次第に深場のケーソン護岸(長さ52m、高さ24m、幅22mのコンクリート函で総数38ケを本土から曳航する、その下には膨大な捨て石が必要、船の係留のため)や中仕切り鋼管護岸(直径1.4m、長さ約30mの矢板で約2700本)の難工事なる。
7)辺野古弾薬庫の下を通って海に入る辺野古活断層と大浦湾の楚久活断層に囲まれた海底区域は、マヨネーズ状の軟弱地盤と活断層による空洞とその下のねじれが多いと指摘告発されている。政府はボーリング調査や海底音波検査のデーターは非公開としている。
(北上田毅さん:沖縄平和市民連絡会、元公共土木技師、辺野古抗議船団船長)
直下地震や津波が発生すれば想像を絶するものになるであろう、辺野古新基地の立地条件が根本から問われている。
8)8月中旬の土砂投入前の翁長県知事権限の「埋め立て承認撤回」表明がなさられるのかと土砂投入反対の沖縄県内外の大きな声と抗議行動が当面の山場になる。土砂が投入されると原状回復の見込みがまったくといっていいほど無くなる。

2.7月23日辺野古移設の賛否を問う沖縄県民投票成立(7.7万票で必要数の3倍超え)-11月知事選以降(12~1月?)実施
1) 行政に対する法的拘束力はないが、住民の意思そのものが示される。以下は過去の例。
・少女暴行事件の後の96年県民投票は「基地の整理縮小と地位協定見直し」賛成が89%。
97年の名護市住民投票、普天間の移設先しての同市辺野古案に対して反対が54%。
市長は辺野古への移設受入れを表明して辞職。本土や沖縄の今後の世論形成には影響を与える。
2)署名請求代表者にはオール沖縄を離れた県内でスーパーと建設業を展開する金秀グループの呉屋会長がいる。
会長は沖縄の二紙に「県民投票が辺野古問題の唯一の解決策。反対・容認であれ、県民の総意として受入れ、分断を乗り越え新しいスタート切ろう」と主張。
3)県民の会代表は一橋大学院生のM君(26歳)。
今年4月から一年休学して、若者グループをつくり、勉強会や賛同者を募る活動をした。20年前の県民投票を知らない若い世代が登場した。前の県民投票は大田知事・革新共闘が周到に準備し用意した。今回はオール沖縄や翁長県政与党や辺野古座り込み部隊等への事前根回しはなかった。移設反対の民意が示された場合、オール沖縄や座り込み部隊等の新基地建設反対との距離感は不明であるが、若い世代が新しい政治の流れをつくれるかに注目する必要がある。
もう一つは、相互の棲み分けが可能な新しい社会性を持った「島ぐるみ」理論が必要になっているのかも知れない。
(主な島ぐるみ:土地を守る4原則、軍用地20年一括払い反対・プライス勧告反対、祖国復帰、日の丸・君が代・乱開発反対、少女暴行事件、米軍基地の整理縮小、オール沖縄)

3.7月27日翁長知事 辺野古土砂投入迫り「埋立承認撤回」を表明
1)前回の翁長知事「理立承認取り消し」は、前仲井真知事の「承認に瑕疵があったことを理由」として行われた。(2015年10月から法廷闘争、2016年12月最高裁で敗訴その間工事は中断された。)
今回の取り消し(撤回は)、その後の工事で生じた事態を理由としている。沖縄防衛局は辺野古の海に8月17日以降から土砂を入れる予定で、県はこれを阻止する手続きに入る。官邸サイドは「大型台風が来たと思って工事が遅れたと思えばいい」と言い、国は執行停止を裁判所に巾し立てる予定。
2)県は8月早々にも沖縄防衛局を聴聞(2週間かかる)→反論内容を精査して8月中旬に撤回に踏み切る。工事は即座に停止となる。仮に聴聞に応じなくても工事は知事権限で停止できる→政府は撤回の効力を一時的に失わせる執行停止を裁判所に申し立てる→認められれば申し出から数週間から数か月後に工事が再開する可能性がある。また、県から国に対して撤回を求める訴訟が起こされるだろう。工事再開‐土砂投入は11月18日の知事選の前か、後か??(投入強行や県民世論反発か諦めか)が大きなポイントになる。
3)翁長知事は撤回の理由として①理立予定海域の地盤が軟弱で護岸が倒壊する危険性があること(「マヨネーズくらい」柔らかな土壌=N値ゼロが深さ40mにわたって重なっている。政府が届けている設計や工法では建設が不可能だ)②理立要件として義務付けられている「全体の実施設計や環境対策についての事前協議」がなされていない③ジュゴンの海草藻類やウミガメの産卵砂場の保全をしなかった④サンゴ類を移植せず着工したことなどを上げている。
(他の具体的な理由として、ジュゴンの消失との消失、米軍の飛行場設置の高さ制限(約55m)に反する建物が71棟(小中学校や工業専門学校も含む)存在する、そもそも護岸工事用石材の陸上輸送は「県公有水面埋立法違反」、大浦湾の二本の断層は活断層の疑いがある)
4)官邸では、知事候補の佐喜真宜野湾市長が辞任するタイミングによっては、普天間基地がある宜野湾市長選と知事選(11月18日投票)のダブル選挙が目論まれているようだ。(今年に入っての名護市長選や沖縄市長選などで与党系候補が連勝。その勢いを生かす)
沖縄の政治日程:8月17日土砂投入通告日、9月9日沖縄「地方統一選」、9月20日?自民党総裁選、10月31日那覇市長選(翁長系保守中道現市長が勝つかが知事選前のヤマ場)、11月18日知事選投票日、12月以降県民投票実施か?
いずれにしても、保守中道層をも取り込めるのは翁長氏以外に見当たらない。
今回の辺野古の海土砂投入反対は、県民の総意を背景に現場の大衆抗議行動と県の行政が一体となって中央政府に立ち向かうという闘争構造を維持し、その力関係を変えることが大切なのではないか。
5)普天間基地の面積は沖縄米軍基地全体の2%です。辺野古に移転しても1%の減少でしかありません。
沖縄の米軍基地1%を減少させるために、あらゆるものを犠牲にして新基地をつくり一兆円の建設費(税金)が投入されます。普天間は移設ではなく撤去でなければならなかったはずです。「辺野古移転は普天間の危険性の除去のためとか沖縄の基地負担軽減の唯一解決の道」などという、コケ脅しはもう聞きたくもありません。
辺野古新基地は「沖縄の声が届かない」国の土地になり、米軍に差し出されます。(普天間基地:480ha、辺野古新基地予定:205ha、嘉手納基地:約2、000ha 本島全体:18、609ha)
米軍は辺野古ダム周辺に兵舎などを建設し、辺野古弾薬庫やキャンプ・シュワブと一体となって運営します。(辺野古弾薬庫:121ha、シュワブ:2、062ha、オスプレイの訓練に使われている北部訓練場(高江ヘリパット含めて):3、500haと伊江島演習場:800ha)
辺野古新基地は滑走路を2本にした飛行場に加えて、強襲揚陸艦ボノム・リシャール(全長257mのヘリ空母)が接岸できる岸壁もヘリやオスプレイに弾薬を積む「弾薬搭載エリア」、タンカーの接岸と燃料の貯蔵施設が造られます。
普天間にはない出撃機能が隠されています。
米軍の飛行場の高さ制限(滑走路から約2、300m範囲は45.7m以下、辺野古の標高9mを足した約55m)を超える建物が71棟あります。(幼稚園小中学校、約800人の全寮制の工業高専がある)
小野寺防衛相は「米軍と調整により高さ制限とはならない」と国会で答弁し、送電線の撤去で済まそうとしています。住民は「東京だったら許されないはず」。
沖縄でのオスプレイ墜落地点は辺野古の約6km先であった。

4.名護市長選の構造(2018年2月オール沖縄稲嶺進市長3選敗北)
翁長知事前知事の「辺野古埋立承認」取り消しの2015年10月から法廷闘争を展開し工事中止にしたが、2016年12月最高裁で敗訴し工事が再開された後での市長選だった。
辺野古問題は辺野古がある名護市長選の最大の争点になるはずだったのだが。
1)安倍政権の原発・基地問題地方選の勝利の方程式
・「自公セット」(名護市人口6万人に公明延べ2000人動員、自民はウラでステレス型の徹底的な保守・基地容認層支持基盤固め)
・「官邸主導」(名護市を通さず辺野古などに補助金バラマキと官房機密費投入と、選挙前に工事を加速して、もう工事中止は難しいという諦めムードをつくる)
・「争点隠しの抱きつき選挙」(基地問題を争点から外し稲嶺の政策=実績をパクリ、アメ=すべての医療費・保育費、給食費の無料化。
(中学卒業までの医療費を無料にしているのは沖縄全体で稲嶺名護施設だけだった)
・「組織ぐるみの期日前投票」(投票率77%、内期日前投票率44%の異常値)
2)渡具知(自民市長候補で市議辞任)・公明陣営の手口
・公明の戸別訪問(各戸毎ごとに情報把握、訪問してそれに合った話をし、医療・給食の署名を集め、集票リストを作る)
・公明党沖縄本部は辺野古反対。前回市長選では公明票の半分くらいが稲嶺に入ったが、今回は自民・渡具知と協定を結んで基地問題を外して、集票マシーンになった。
・子育て世代、「基地には反対だけど、生活につながる負担を軽くしてくれるのなら無料化の市長を選びたい」。
・2010年稲嶺初当選から基地交付金は切られたが、「稲嶺が貰わないので市の経済と財政は苦しくなった、市民の生活を圧迫している」キャンーンを張る。
特に。18才初選挙の若者層にネット、LINEで流す。
・道路、港湾、病院、校舎整備などの補助金は分野ごとに各省庁が個別に予算を計上するが、沖繩だけは内閣府沖縄担当部局が一括して予算を計上する。総理官邸の菅は沖縄担当で予算、人事、政策をコントロールしている。
(2010年の稲嶺初当選前、北部振興策800億のうち400億が名護に流れた。国保の滞納者増え、生活保護世帯が増え、建設業者30社が倒産した。振興策は市民の生活を豊かにしないという認識が生まれ、稲嶺に流れが変わった。2014年の市長選挙では自民党の石破幹事長が名護に500億とぷちあげたが一晩で破産した)
・相手陣営と同じような市民組織をでっち上げ、8回あった公開討論会には徹底して出ない。若い人の間に「稲嶺さんは基地問題とか大変だから重荷を降ろしてあげようね」、「お父さんを応援してね」わーっと拡散される。情に訴える、フェイクニュースを安易に信じる若い人が多い。
小泉進次郎の街頭演説とかバラ色の未来イメージチラシにもどんどん飛びつく。
・選挙中の小泉進次郎の街頭演説。内容は稲嶺の応援演説みたいにして途中と最後に、だから渡具知にしましょうとする。集まった人をショベルカーのように期日前投票にごそっと運ぶ。
・企業の組織ぐるみ期日前投票はあたりまえだが、だんだん手の込んだ手口になる。
従業員だけではなく、例えばウコンの工場では地域の生産者を巻き込む。
・渡具知市長、当選一週間後に官邸詣で。「名護にお金をください、優秀な官僚を回してください」。(菅に会えたのかは定かではないが)
(沖縄市民のオピニオン雑誌「けーし風」2018年4月より)
*「官邸人事‥・2018.7.31 朝日新聞2面」
沖縄県の抵抗で辺野古の工事が遅れていた。2016年1月官邸は工事を加速させるために国交省の港湾局の埋立のプロ2名を防衛省に出向させた。

(補足)
稲嶺派が何故負けたのか?

1)相手の候補者は市会議員。市会議員と2期やった市長では格が違う。横綱相撲で行けるという「おごり」があった。
2)全国から稲嶺陣営の応援に来た。応援部隊はレンタカーに乗って「辺野古反対」を訴えるが、住民を問い詰めるようなことも言う。それに対して住民が反発した。
3)稲嶺選対も政党ごとに選挙事務所があって、統一性がない。公示直前に翁長知事が喫寒を持ってカツを入れたが、すでに遅かった。
(終)

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