野次馬雑記

1960年代後半から70年代前半の新聞や雑誌の記事などを基に、「あの時代」を振り返ります。また、「明大土曜会」の活動も紹介します。

2012年06月

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中東のシリアの情勢をめぐって、連日、様々な報道がされているが、その実態は日本に居る私たちには分かりにくいものである。
今年の1月、重信メイさん(国際ジャーナリスト・重信房子さんの娘)がTV取材のスタッフとしてシリアの現地に入り、その時の報告を4月7日の「明大土曜会」で行った。
今回と次回の2回に分けて、その報告を紹介する。(報告は読みやすいように編集しています。)
(文書が長くブログの字数制限を越えるため、No243-1からNo243-3に分けて掲載します。)

<取材報告:前半>
O・K「重信メイさんが正月から2月末まで2ケ月間、シリアの取材に行ってきました。シリアでは政府軍によって8,000人の反政府勢力が武力で弾圧された、それが日本での報道ですが、それが本当にそうなのか。
メイさんが2ケ月もシリアに取材に行ってきたので、その辺りの話を聞きたいと思います。」

メイ『元旦に日本を出て、シリアとレバノンの両方に行きました。今回は実質的にはTV番組の取材のコーディネートかつ通訳として行きました。全部で4人。
正月の2日にレバノンに着いて、レバノンから陸路でシリアに入りました。
その時はまだ、今ほどではないけれど、ダマス(ダマスカス)も比較的安定していました。10日間くらいシリアに滞在して、その後、他の皆は日本に帰りましたが、私は隣の国からいろいろと情報収集をしていました。

とにかく(日本での報道と)一番違ったのが2、3点あって、まず、今、メディア戦になっているということです。
シリア自体はメディアの報道で見るのと全く違うというのがまず最初の印象でした。
何が違うかというと、例えば人々の意見です。メディアだけを見ているとあたかも政府対国民という報道しかないじゃないですか。でもこれが全然違うんです。
私たちは100人くらいの国民に話しかけて聞きましたが、ほぼ99%がアサド大統領を支持しているんです。ビックリするほどでした。

2番目に違うということが、(日本での)報道ではアラウィ対スンニの宗派的対立になっているという報道があるじゃないですか。
だから当たり前のように殺し合いになっているんだ、となっているけれども、これもまた全然違いました。
特にダマスで、私たちはマーケットとかレストランとか道端などいろんなところで、私もコーディネートの仕事と自分の情報収集のためにも、会う人会う人、どこに行っても1日10人、20人と話を聞いていました。
政府で働いている人や道端にいる人にも話しかけ、全部で100人以上に話を聞きましたが、とにかく宗派対立じゃないということが分かりました。
イラクの時もそうでしたが、始まりは宗派対立ではなかったのが、そういう風にもっていかれて、結局そうなってしまった。シリアでも今になって地域によって(宗派対立が)出てきているけれど、一般的にはアサド大統領を支持している人というのはほぼスンニ派なんですね。
対立しているはずのスンニ派側の人たちに話しかけて分かったのが、そのスンニ派のミドルクラス(中流階級)からミドルアッパークラスは皆、アサド大統領を支持していることです。何故支持しているかと言うと(政権が倒れると)安定が無くなるからです。
また、ミドルクラスからミドルアッパークラスというのは、どちらかと言うとリベラルです。エジプトもチュニジアもそうでしたけれど、今のアサド政権を引っくり返そうとしている勢力はほぼ大半、もちろん左派もリベラルもいるらしいですが、イスラム原理主義者なんです。
だからスンニ派の中でも「イスラム原理主義者はいやだ。」という人たちがいっぱいいるんです。イスラム原理主義者たちが政権を取ると、今までのオープンでリベラルな生活が完全に無くなってしまう訳ですから。
今までのエジプトとかチュニジアを見ていると、イスラム原理主義者の人たちというのは、ずるいんですよ。革命を起こしている、革命はかぎ括弧つきなんですけれど、革命が起こっている時は、「私たちは皆さんを尊重する」とかいろいろ言うけれど、結局、政権を取る、あるいは力を持つようになると、それがコロコロ変わってくる。
1年も経たないうちにチュニジアもエジプトもどんどんとハイジャックされている。英語で表現すると「イスラム原理主義者に革命がハイジャックされてしまった。」ということですけれど、本当にそうなんです。
革命をやり始めた人たちは違う人たちだけど、結局は原理主義者たちの方が支持者が多くて、支持者が多いことによって、エジプトなどは国会議員も、これから決まってくる大統領も、これから決まってくる政権もみんなイスラム原理主義者が取ってしまうと、国が全体的に変わるということですね。
そういうことをシリアの大半の人は心配しているんです。

(No243-2に続く)

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(No243-1の続きです)

3番目にすごくビックリして変わったなと思ったことは、昔、私がシリアに行った時は、シリアの国民はあまり政治の話をしたがらない、あんまりストレートに政府に対して批判などしたがらなかったんですが、今回はビックリするほど違って、殆どの人がみんな政治を語る、みんな意見を持っているんです。恐れずに語っています。
 私たちがいろいろ取材している時に、誰かシリアの政府の人が付いてるから怖くてこう言ってるとか、そんなんじゃないですよ。北朝鮮みたいな感じではなくて、一緒に付いてる人は私たちが取材している時は、取材場所から遠いところでお喋りをしていたりしていました。付いてきて ウオッチして何かマークしている訳では全くないですよ。
だから、そういう何て言うんだろう、ステレオタイプをマスメディアが流して、こんなことがあるんだ、だからこの政権はダメなんだと言うのは、行ってみると全く違うことが見えてきた。私も想像していなかったからビックリしました。

違うと思ったことをもうひとつ。
私が会った多くの人は政治を語っているだけではなくて、ちゃんと政府も批判しているんですね。例えば腐敗とかそういうものを批判している。
別に恐れているという訳ではなくて、批判はちゃんと口にしている。ただ、今起こっているような、海外から政府を変えようとか、武器を密輸しようとか、そういうことに対してすごく反対している。
殆どの人が政府が変わるということに反対している、改革を求めている。批判はするけれども改革は必要だ、改革は必要だけど今起こっている反政府勢力側のやっていることには完全に反対で、全然支持していない。
私が会った何人かの若者は、「自分たちも最初の頃のデモに出ていた。出たけれども、その頃は改革を要求していたから出ていた。今こうなって政権を引っくり返そうとか、アサド大統領だけを抜こうとか、そういうことだったら私たちは嫌だ。」と言っていた。何故なら「腐敗システムが変わる訳ではなくて、ただトップの人が変わるだけだから私たちはこれを求めている訳ではない。」ということだった。
また、「みんな自分たちみたいに最初はデモに行っていたけど、今は冷ややかになっている。何故なら違う方向に行っているから。」とも言っていた。

普通だったら、みんなが恐れていることは政府とか秘密警察とかじゃないかな。私の昔のシリアの印象がそうだったから。でも実際は本当に逆なんです。
実は反対勢力が政府の支持者とか支持者の息子をキズナップ(誘拐)したり、脅しの手紙を送ったりしていて、そういうことが逆に怖いらしい。
例えばオールド・マーケットに行ったんですが、市内に千何百年前からあるマーケットで、観光客も一番行くところなんですが、普通そこは夜の10時くらいまで開いているんですね。
でも、そこが7時半とか8時に行くとみんな真っ暗。何でこんなに早いんだろうと思って一緒に付いているドライバーとかに話を聞いたところ、「もう怖いんだ。」と言うんです。たまにポツンポツンと開いている店があるので、そういうところに行って話を聞いたんですが、「何でこんなに早くマーケットが閉まっちゃうんですか?」と聞いたら、困った顔をして、「早めに店を閉めないとひどい目に遭うぞ。」というような脅しの手紙が来るということなんです。それは何を狙っているのかというと、反対勢力側は困らそうとしている。経済とか国の治安とかそういうものを困らすことによって、政権を落とそうというそういう方針を取っているからそうなったことも分かった。』

H「それはどちらかというと原理主義者の発想ということなんですか?」

メイ『原理主義者の発想です。原理主義者の発想についてもう一つの例は、私がいる時に丁度自爆テロがあったんです(1月6日)。ダマスにも地域によって一般的に保守的な住民、イスラム原理主義者が住んでいるところがあって、そこのモスクに金曜日に取材に行きたいと言ったんです。
そうしたら違うところのモスクに連れていかれたんですが、その時に爆破事件があったということを聞いて、「じゃあ私たちはすぐそこに行きたい」と話して連れて行ってくれたんです。
そうしたら26人くらい死者が出ていて、60人くらい怪我人が出ていた。たぶん日本でもニュースにも載ったと思いますが、2番目の自爆テロだったんです。現場に行ったらまだ遺体があるんですね。遺体といっても犠牲者側の遺体は片づけられていたんですが、加害者の方はいろいろと調べもあるのでまだあるんです。
私はこの爆破事件は、ちょっと汚いやり方だと思ったんです。丁度金曜日は礼拝の日で、礼拝の時間が11時半くらい、爆破事件が10時半過ぎなんですね。爆破事件のあったところはシリア警察の前なんですけれど、そのシリア警察署と礼拝のモスクは隣あわせです。

(No243-3に続く)

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(No243-2の続きです)

それで爆破事件は何を目的にしているかと言うと、反対勢力側の人たちが礼拝で集まってくるので、この爆破を取材に来る外国メディアを利用して、そこで反対勢力がデモをしているようなところを撮らせようという狙いだったのではないかと思います。
私たちが現場に着いた一番最初のメディアだったんです。現場に着いたら、丁度礼拝が終わってイスラム原理主義者の人たちがモスクからダーっと出てきたところで、いろんなスローガンをガンガン言って、その反対側にいる政府支持者の人たちとか、爆破事件を見に来た人たちとケンカになっていて、それをシリア警察が止めようとしているというものすごい事態に幕込まれたんです。
しかも そこで私たちが唯一のメディアだったので、両側からガーっと来て、「映せ!」「映しちゃダメ!」そういうのばっかりで、「もう少し前に来れば被害者の遺体があったのに何でそれを映しにこないんだ!海外メディアだったら映しにくるだろう!」という人もいれば、逆にいままでの海外メディアの報道が全部反シリアの報道なので、私たちもそういう人たちではないかと思っている人たちがすごく怒って、「いまさら反対勢力のデモを映すのか!」とケンカを売ってくるような感じだった。
ものすごいカオス(混乱)の中に居て、イスラム原理主義者の人たちは「映せ、映せ、これを映せ!」と言っていたり、秘密警察ではないかと思われる人が「映すな、映すな!」とすごい怒っていたり、すごいことになった。
それをいろいろやりながら撮っていたら、ドライバーとも離れ離れになってしまった。それでドライバーを見つけて、それで爆破事件があったところの近くに車で行きました。今の状態があったから、近寄れなかったんです。そこで、もう1回車に乗って爆破事件のあったところに行ったんです。
海外メディアはみんな口をそろえて、これは政権がやったことだと、リビアの時もそうだけど、これは政権がわざとやったことだと言っているけれど、実際に現場を見た人からすると明らかにこれは反対勢力のやったことです。
【注:自由シリア軍は、「自由シリア軍が政府軍への攻撃再開を宣言したことを受け、離反兵を欺くためにシリア政府がこの行為を行った。自由シリア軍はこのような作戦を実行する技術的人的能力を持っていない」と述べ、関与を否定した。】
というのは遺体がちゃんとあるです。頭が吹っ飛んで、ハイウエイに頭がぶつかって血が跳ねていて下に遺体と頭があるんですね。何を狙ったかというと、警察官の人がシフトを代える時に来るバスがあるじゃないですか。そのバスを狙ったらしくて、バスの中にいた人に死者が出ていた。もし政府がやるとしたら、そこまで被害者は出さないと思う。
もう一つおかしいと思ったところは、以前の爆発事件によって政府の建物などに行くダマスの重要な道が封鎖されてたりして、取材で動くのがものすごく不便だった。
街の不便より治安ということで、いろんなところをブロックしてるけれども、本当にそれを政府がやっていたとしたら、そんなに街の動きを不便にするよりも、コントロールしやすい方がいいと思うんです。
いろいろと見ていると、誰が政府のために自爆してくれるのか、そんなことはないですし、自爆はそもそもイスラム原理主義者がよく使うやり方で、私はイスラム原理主義者がやっていることは疑いないと思う。

ホムスという、一番今テレビに出ていて、あたかもシリア中がそうなっているようなイメージで出てくる街、それがメディア戦なんですが、そのホムスに行ったらメディアで見ることとはビックリするほど違うと思った。
何故かと言うと、今起こっていることはホムスというある街でしか起こっていないことで、他のところでちょっとデモがあったとしても、今テレビで見る状態はホムスだけなんです。
ホムスというのはシリアで3番目に大きい街ですが、住民は宗派とかミックスで、すごく大きい街なんです。その街の中の例えば東京で言えば新宿とか、そういう地域の一部が完全にイスラム原理主義者がコントロールして、デモをしたり政府と戦ったりしているんです。
そこをメディアが取材しているんです。そこがユーチューブにビデオ映像が出ているんです。それを世界の人が見て、シリアはすごいことになっている、シリアは国がグチャグチャになっている、政府が国民を殺しまくっている、ということになるんです。メディアの報道がそこなんです。
テレビで見るとホムスなんか完全に破壊されている、政府の攻撃で完全に破壊されているようなイメージで見るけれども、ホムスに行ったら街は普通で、一部を除くと全体的にスンニ派ですが、確かに「アサド出ていけ」という落書きはあちこちにあるけど、同じハンドライティング(筆跡)だから同じ人がやっているんだろうと思う。』

次回につづく


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