今回のブログは、「10・8山﨑博昭プロジェクト」のWebサイトに7月22日付で掲載された、山本義隆氏の「コロナと旅とリニア中央新幹線――コロナに思う その2」である。プロジェクト事務局のご厚意により転載させていただいた。

【コロナと旅とリニア中央新幹線――コロナに思う その2】 山本義隆
 当プロジェクト発起人の一人である山本義隆氏から「コロナとオリンピックに思うこと」(5月6日)に続いて、「コロナと旅とリニア新幹線――コロナに思う その2」の投稿がありましたので、掲載します。長文のため、上下2回に分けさせていただきます。なお、前回の「コロナとオリンピックに思うこと/山本義隆」は今回の論考と同じく〈事務局からのお知らせ〉ページにあります。次のURLをクリックすれば読めます。http://yamazakiproject.com/from_secretariat/2020/05/06/4773 (10・8山﨑博昭プロジェクト事務局)

●感染者数への疑問とGo Toキャンペーン
 国の緊急事態と東京都のアラートがともに解除された後, 6月末から感染者数が増加し続けています。とくに東京は7月のはじめ連日続けて100人を超す新規の患者を数え, 9日からは連日200人を越えています。3月の小中学校の一斉休校から緊急事態宣言やマスクの配布にいたるまで, 安倍内閣のやってきたことは, 本当に感染拡大に対処するためというよりは, その時その時の思いつきのような政治的なスタンドプレーでしかなかったのです。たしかにこれまでのところ日本は欧米にくらべて感染者数が少なかったようですが, それは理由がわからないにせよアジアの国にほぼ共通したことで, 日本政府の対策がとくに優れていたわけではありません。
 政府は一応, 新型コロナウイルス対策の専門家会議なるものを作りました。それは, 実際に現場で感染症と闘ってきた医師をふくまない学者さんのあつまりで, 必ずしも十全なものではなかったようですが, 政府はそれすらも重視せず, これから第2波が始まるのではないかという時期になって解散させてしまったようです。その点では東京アラートも, 今になってすれば, 知事選にむけての選挙運動の一環ではなかったかと思われます。
 そういったことのひとつひとつについて, どれだけの効果と弊害があったのか, 判断が正しかったのかどうかのきちんとした点検が不可欠ですが, その作業もなされているようには見えません。そもそも小中学校の一斉休校を首相が独断で要請するというようなことは, 法的根拠もなくほとんど独裁国家なみのめちゃくちゃですが, その点についても点検と批判が当然必要でしょう。すくなくともそういう前例を作ったということは, きわめて問題のあることです。まして, 緊急事態条項を入れるために憲法を改正しようなどというような議論は, とてもじゃないけれど認められるものではありません。
 ともかく, 6月以降のとくに東京での新規患者の増加は相当なものです。以前に私は『毎日新聞』だけを見ていると言いましたが, コロナについてのより詳しいことを知りたくて, 6月半ばより『東京新聞』の購読も始めました。
 『東京新聞』には東京の区ごとの患者数だけではなく, 毎日の患者増加数が出ているのですが, 注目されるのは新宿区です。他の区は1日の増加がせいぜい2人とか3人とかですが, 6月後半から7月にかけて新宿区だけは1桁多く, 連日20人や30人を記録しています。東京全体の新規の感染者数が3日連続で200人を越えた11日には, 新宿区1区の新規感染者が94人を数えています。その点について新聞にはこんな風に書かれています。
「その〔都内の新たな感染者の〕うち11人は新宿エリアにあるホストクラブ2店の従業員。おなじ店の従業員に感染者が出たために, 集団検査をしたところ, 感染が判明した。無症状の人が多いという。(『東京新聞』 6月21日)」
「〔都は〕感染が一定水準に収まったとして11日にアラートを解除, ……。しかし, ホストクラブなどで集団検査を進めたこともあり, アラート解除後は再び感染者が増えている。(『東京新聞』 6月25日)」
「〔都の感染者は〕6月12~25日の2週間は計500人で, アラート解除前の2週間の計200人から倍増。今月から新宿区でのホストクラブの集団検査を始めた影響もある……。(『東京新聞』 6月27日)」
 そして都内の感染者が最多を数えた7月9日の翌日の新聞:
「東京都は9日, 新たに224人の新型コロナウイルス感染者が報告されたと発表した。1日あたりの人数では …… 過去最多を記録。…… 小池百合子知事は都の対策本部会議で‘検査件数が増えていることが影響しているが, 感染者数の動向にはさらなる警戒が必要だ’と警戒を強めている。(『東京新聞』 7月10日)
 要するに, 患者数が増加した一因は無症状な人も含めて集団的な検査を始めたからだということですが, 裏返せばそれは, 検査をしていなければ見逃されていたということを意味しています。ということは, これまでの数字は一体何であったのか, 新宿区以外でも積極的な検査をしていれば感染者は本当はもっと多かったのではないのか, ということになります。
 それとともに, 新規患者の増加と検査数の増加が比例していないという事実もあります。つまり集団検査による以外にも増加の原因があるのではないかという問題です。
 いずれにしても, 第1波がまだ終息していないというのか, すでに第2波が始まったというのかわからないにせよ, いまなおコロナ禍の真最中と見なければならないでしょう。
 にもかかわらず11日の『毎日新聞』には「Go To 22日から開始」とあり, 「感染拡大防止と社会経済活動の両立に取り組むことが政府の方針。スポーツ観戦も予定通り行うということで, Go To トラベル事業も進めてゆく」という国土交通省の談話が載せられています(図1)。旅行代金の35%分の割引と15%のクーポン券で「旅行代金の計50%を政府が支援する計画」で, 7月22日から実施なのだそうです。旅行業界の破格の優遇です。もちろん感染症に詳しい医師からの疑問があげられています。


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▲毎日新聞7月11日1面
 「不急不要の外出を控えるように」と宣伝してきた状況が本質的に変わっていない現在, 素人判断でも矛盾に満ちていることがわかります。実際, 人間の移動こそが感染地域拡大の最大要因であることを考えれば, 現時点での旅行の勧めは端的にコロナの感染拡大を助長するものであり, 日本各地で行われているコロナとの闘いに敵対していると言わねばならないでしょう。首相が自宅で犬と戯れている動画を配信することは, 愚かとか言いようがありません。しかし感染地区の拡大を助長するような政策を, それも多額の税金を使って推進することは, 愚かと言うよりははっきり言って犯罪的です。
 他方で, 個々の観光地や旅館経営者が現時点で観光客の増加を本当に望んでいるのか, その点も疑問に思えます。7月10日には, 東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県の新規感染者が300人を越えています。このように首都圏で新規患者が急速に増加している現在, あまつさえ無症状で本人も自覚のない患者が相当数存在することが判明した現在, 首都圏からの観光客の増加にたいしては, 大きな危惧を抱いている, あるいは迷惑にさえ思っている地方の観光地や業者は少なくないと思われます。『毎日新聞』に北陸総局の記者が地元のそういった思いを代弁する形で書いています:
2015年の北陸新幹線の金沢延長開業以来, 観光客が急増していた石川県も大きな影響を受けた。人口あたりの感染者数が全国有数の多さとなった県では, 感染症防止と経済発展を両立させる難しさが際立つ。観光客を受け入れるリスクや, 外国人や県外客向けに比重を大きく移したことの弊害が顕在化した今, 観光地としてのありかたを見直すべきではないか。(「オピニオン 記者の目」7月9日)
 そもそもが,旅行業者が困っているといっても, 困っているのは旅行業者だけではありません。その他のサービス業も製造業も等しく苦境にあります。にもかかわらず旅行業界にたいするこの破格の優遇措置は, その業界団体と有力政治家のあいだに多額の献金等の密接な関係があるからだとしか考えられません。緊急事態宣言のような, 国民たいしても忍耐を強いるような措置は, パンデミックのような場合にはやむを得ないということをかりに認めたとしても, それはなによりも公平で、万人が納得できるものでなければならないでしょう。
 現在, コロナが終息したか否かに関わらず派遣や非正規の労働者はすでに多くが路頭に迷い, そうでなくとも職を失なう瀬戸際に立たされています。零細な飲食店は, 店舗の月々の家賃にさえ苦慮しています。中小企業の倒産も増加しています。その背後にはその何倍かの倒産予備軍が存在しているでしょう。それにもかかわらず, このことを安倍政権は正面から受け止めようとはしていません。そんな状況下で有力政治家にパイプを持つ強力な団体を持つ業界だけが優遇されるようことでは, ましてそれが現在のコロナとの闘いに明らかに逆行しているとなれば, 決して許されることではないでしょう。
 ところで, 最近の新聞では「コロナ後」という記事がよく見られます。それはコロナ後の新しい生き方を語るものです。福島の原発事故の後にも「エネルギーの無駄使いをしないように」というような形で「フクシマ後」が語られたのと同様です。 それはそれでよいのですが, しかしそういうことを個人の心構えや決意, あるいは個人の生活習慣の問題として語るのは矮小にすぎます。大切なのは, 社会的な構造の問題として捉え, インフラストラクチャーや組織形態を含めて, 構造そのものの変革として語られなければならないでしょう。
 新自由主義のもとで, 病気にかかるのも自己責任, 失業するのも自己責任というようにして, 保険所を削減し, 弱者にたいするセイフティー・ネットである社会保障を削減してきたつけが今問われているのです。これまでの社会構造の総点検が迫られているのです。

●リニア中央新幹線という問題
 インフラストラクチャーをふくめた社会構造という点で, 6月27日の『東京新聞』の朝刊一面に「東京アラートに疑問 解除後に感染者倍増」とならんで「リニア27年開業延期へ 静岡で会談 知事, 工事認めず」とあったのが象徴的で, 眼を惹きました(図2)。「リニア」というのは 東京-名古屋-大阪を結ぶ「リニア中央新幹線」, 完成したら東京-名古屋を40分, 東京-大阪を67分で結ぶと言われる第二東海道新幹線のことです。


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▲東京新聞6月27日1面
 私は昨年5月, ある会で科学技術ジャーナリズムについて語る機会があり, 「科学技術ジャーナリズムの役割」として, 以前は「啓蒙」だったが現在は「批判」でなければならないというようなことを語りました。たとえば「原子力」について, 1950年代60年代には, 原子力とは何であり何に使われるのかが語られました。 つまりかつてのジャーナリズムは原子力が開く明るい未来を語ったのです。しかし現在では, 原子力のどこに問題がありどのような危険性があるのかを語らねばならない, ということです。
 その一例として私はリニア中央新幹線を挙げました。そのときの挨拶の全文は岩波書店から出ている雑誌『図書』の2019年9月号に載っていますが, そのリニア新幹線に関する部分だけ, すこし長いけれどもここに再録します:
……とりわけ先に言った利権集団の推進する巨大プロジェクトの如きものは, 往々にして地域住民への十分な説明も与えられることなく, 自然環境と地域共同体の破壊をもたらすものであり, これらの弊害にたいしてこそ科学技術ジャーナリズムには批判の役割が求められているのではないでしょうか。
 ひとつだけ例をあげます。
 2年ほど前に談合事件で新聞に出て以降, マスコミはあまり取り上げなくなりましたが, リニア中央新幹線計画というのがあります。談合事件は, その計画が大手建設会社にとって金のなる木であることを垣間見せたのですが, それはまさにその手のプロジェクト ―― 暴走するプロジェクト―― の典型だと思います。
 それまで山体に手が加えられたことのないかけがえのない自然の残る南アルプスの深部を貫通するトンネルを掘るということは, そこから搬出される膨大な土砂の投棄もふくめて, 甚大な自然破壊であり, そのことが中部日本の地下水脈にどのような影響を与えるのかは, 誰にもわかりません。しかし, 戦後70年間の「開発」の経験から学んだように, 自然環境の破壊は, 結果がわかったときには手遅れなのです。
 そしてまた, 東京・大阪間無人運転とありますが, 事故が起こった際にどう対応するのか, 納得のゆく説明はありません。事故が起こった時になって, またまた「想定外でした」ということで責任逃れをするのでしょうか。「絶対安全」というような専門家のお墨付きは, 福島の事故以来, 効力を失っています。大深度地下で事故が起こったときに生じるであろう乗客のパニックを想像すると, 背筋の寒いものがあります。
 そもそもこれまでの新幹線の何倍かとも言われる厖大な電力を必要とする計画は, それ自体, 省エネに向かう時代に逆行していますが, 問題はそれだけではないと思われます。
 品川・名古屋間2027年開通, 名古屋・大阪間はその後2045年開通とされていますが, 品川・大阪間全通までの18年間, はたして人は, 名古屋までリニア新幹線に乗り, そこで在来の新幹線に乗り換えて大阪までゆく, というような面倒なことをするのでしょうか。品川・名古屋間40分といっても, それは列車が品川のホームを出てから名古屋のホームに着くまでの時間であり, 乗客は荷物を持って地下数十メートの品川駅のホームまで降り, 名古屋駅のホームからまた荷物を持って地上まで数十メートル登り, そこで在来の新幹線に乗り換えるとなると, 東京・大阪間で見るとそれほど時間が短縮されるわけではないでしょう。そうなると, 一度くらいは話の種に利用したとしても, 結局, 東京・大阪間の移動は在来の新幹線か空路ということになるのではないでしょうか。
 そもそも人口減少で, 利用人口も減少が予想されます。それに会議など, 現地にゆかなくともできる時代なのです。
 外国からの観光客が増加するといっても, 観光客にとっては, 日本の田園地帯や河川をつぎつぎ通過する車窓風景も旅行の楽しみの一部なのです。私は以前, 台湾か中国の団体客と新幹線で一緒になったことがありますが, やはり富士山が大きく見えたときには皆さんおお悦びで写真を撮っておられました。名古屋までゆくのに1時間ほど早く着くからといって, 旅情もなにもない殺風景な地下鉄のごとき列車に数十分も乗る方を積極的に選ぶのでしょうか。旅行者はスピードだけを望んでいるのではないのです。
 とすれば, 名古屋・大阪間の開通以前に赤字になる公算は大きいと思われますが, そうなるとまた国庫が尻拭いをするのでしょうか。
 いずれにせよ, 新幹線利用人口の減少が見込まれる21世紀中期に, 単一の電鉄会社・JR東海が東京・名古屋間, 名古屋・大阪間に競合する二つの新幹線路線を持つということは, 経済的合理性の観点からも疑問符がつきます。
 これを語ったのはもちろんコロナの前ですが, コロナを経験した現在, このとき提起した問題がより切実なものとして浮かび上がってきています。
 もともと私がリニア新幹線問題に関心を向けたのは, 福島の原発事故からです。超高速の列車が膨大なエネルギー(電力)を必要とすることは, 物理学の常識です。物体は, 加速するときには外力が必要ですが, 一定の速度で動くときには外からの力を必要としないというのは, 真空中での話です。大気中では空気抵抗があるため, 加速はもとより一定速度を持続するためにも大きなエネルギーを要します。しかも空気抵抗は走行速度とともに急速に大きくなります。したがって時速500キロで走るということは, この厖大な空気抵抗にうちかって動かすために大変な電力を要するのです。
 JR東海がリニア中央新幹線構想を発表したのは2007年です。
 そのおなじ年, 私はみすず書房から『一六世紀文化革命』を上梓し, その「あとがき」に書きました:

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原子炉について言うならば, ひとたび事故が起れば恐るべき影響を与えることは, すでにチェルノブイリで実証ずみである。その事故の影響の甚大さがこれまでの技術のものとは桁違いであることは, いまなお事故現場が人の立ち入りを拒み, 近隣の地域の居住が制限されていることからもわかる。それだけではない。原子炉はたとえ無事故で稼働し終えたとしても, 放射線に汚染された廃炉となり, 大量のプルトニウムをふくめて運転期間中に蓄積された放射性廃棄物とともに, 人間の時間間隔からすれば半永久に隔離されなければならない。…… 放射性原子核の半減期を短縮させるような技術が見出されるとはとても考えにくいが, 百歩譲って将来的にそのような解決策が見出されると仮定しても, それとてコストとエネルギーを要することである。とすれば, いずれにせよ, 現代人が受益したエネルギーの使用後の後始末を何世代も後の子孫に押し付けることになり, それは子孫にたいする背信である。
 このように原子力発電の抑制・中止を訴えていたのです。福島の原発事故の4年前です。しかし当時, そのような訴えは真剣には受け止めてもらえませんでした。実際, 当時はまだ原発の危険性がそれほど問題視されていなくて, それどころか電力会社や原子力村の学者や経産省官僚の語る安全神話がまかり通っていたのであり, すでに50余基を数えていた日本の原子力発電所が, さらに増設されようかという情勢にありました。エネルギーを大量に消費すること自体が, 社会的にそれほど問題視されていなかったのです。JR東海のリニア計画は, その背景で語られていました。おそらくJR東海だけではなく, 東京電力・中部電力・関西電力はリニアのために更なる原発の建設を想定していたと思われます。
 とするならば, 4年後, 2011年の福島の原発事故に直面してJR東海のリニア中央新幹線計画そのものが見直されてしかるべきと思われるのに, そのような動きはまったくなかったのです。そして2014年に国土交通省はJR東海にリニア中央新幹線の着工を認可しました。それは, 今後も原発を増設するということを言外に語っていることです。私がリニアの問題に関心を向けたのは, そのことからです。その頃からリニアに関する新聞記事に注意するようになりました。
 そして今回のコロナ禍は, より大量の人間の, より遠くへの, そしてより迅速な運搬をめざすというこれまで鉄道の技術革新を底辺で貫いていた思想, そしてそのことによって社会が活性化し経済が成長するという20世紀以来の社会思想・経済思想にたいして, その根本的見直しを迫っていると考えられます。そういうわけで, コロナに関連してあらためてこの問題を取り上げることにしました。
 福島の事故とコロナ禍を経験した私たちが, 日本社会の基本的な在り様に対してしなければならない総点検の一環と言えます。

●「六千万人メガロポリス」という幻想
 2019年7月6日の『朝日新聞』には「リニアによって東京-名古屋‐大阪の三大都市圏が約1時間以内でつながって人口6千万人を越える《巨大都市圏》が誕生するとして経済界の期待は大きい」とあります。
そういう大風呂敷を最初に広げたのはJR東海自身です。JR東海が主張しているリニア中央新幹線建設推進の主たる理由は,
 〔1〕 高速移動による6000万人の首都圏の誕生,
 〔2〕 首都圏を結ぶ大動脈の二重系化で災害に備える,
とあります。しかし〔2〕は付け足しです。実際, 災害時に重要なのは人の輸送ではなく物資の輸送であり, それは新幹線がなくともできることです。事実, 東日本大震災で東北新幹線が不通になりましたが, そのことはとくに問題になりませんでした。物資の輸送はトラックやヘリコプターで十分できていたのです。そもそも大地震で東海道新幹線が不通になるとすれば, 両方とも不通になる公算が大きいと思われます。
 結局, 表明されているリニア推進の中心的目的は〔1〕です。そしてそれは多くの自治体にも共有されてきました。1979年に東京・神奈川・山梨・長野・愛知・岐阜・三重・奈良・大阪の9都府県が「リニア中央新幹線建設促進期成同盟」を発足させました。その一貫した主張が「東京・名古屋・大阪を1時間でつなげば6000万人の首都圏が現われ, 経済が活性する」というものだったのです(樫田秀樹著『“悪夢の新幹線”リニア中央新幹線』旬報社, p.83f. より)。
 高度成長がまだ持続していた1971年に出た, 当時国鉄でリニアモーターカー開発の中心にいた技術者・京谷好泰といま一人の国鉄の技術者・奥猛, そして佐賀利雄の3人の手になる書『超高速新幹線 東京・大阪一時間』には書かれています(以下, 敬称はすべて省略させてもらいます):
 東海道メガロポリス地域は総面積で全国の19.2%を占めている。可住地面積でみても全国の22.4%を占めているにすぎない。しかしながら …… 知識や情報を核とした中枢管理機能は全国の7~8割に達しており, かつ, 高密度社会を形成している。比較的全国シェアが低い人口についてみても全国の51.4%と半分以上の人々がこの地域に住みついている。
 この地域には東京, 名古屋, 大阪の三大都市が配置されているのみならず, 東京から大阪までの東海道沿線地域内に人口10万人以上の都市が, 平均30.7キロおきに配置されている。そして第一東海道新幹線開通以前においては東京, 名古屋, 大阪は, それぞれ別々の都市圏域を形成した三つのメトロポリスであった。ところが第一東海道新幹線が開通することによって, ひとつの巨大都市圏域を形成することになった。そればかりではない。三大都市圏の中間に位置する地方中核都市もそのなかに包摂されて, 巨帯都市――東海道メガロポリスを形成することになった。……
 第一東海道新幹線は東京と大阪を3時間10分で結んでいるにすぎないが, しかし第二東海道新幹線は, 東京-大阪をわずか60分, 東京-名古屋を40分, 大阪‐名古屋を20分で結ぶわけであるから, 三つの都市は完全にひとつの都市圏を形成させられるわけである。(京谷他『超高速新幹線』中公新書,1971, p.23f. )
 いずれにせよより多くの人をより早く移動させより広く結びつければ経済が活性化するというのは20世紀高度成長期の思想そのものであり, それは他の企業もあるいは多くの自治体もが共有していた思想なのです。
しかし新幹線が実際にもたらしたものは何だったのでしょうか。ジャーナリスト川島令三のバブル期の書に書かれています:
 かつて新幹線が開通していないときには, 東京-大阪間は6時間半かかった。東京-大阪間を日帰りすることはできても, 現地での滞在時間はわすか2時間ほどしかなかった。これでは日帰りで仕事などできるはずはなく, 結局一泊するのが常であった。それが, 新幹線の開通によって最大11時間も滞在できるようになり, 一泊しなくてすむようになった。
その結果, かつては関西圏と東京圏が別々の核として機能していたのが, 新幹線の開通で東京だけが核になってしまった。行政の中心である東京のほうが都合がいいに決まっているからだ。関西に本社があった会社も,続々と東京の本社機能を移しだした。…… 関西が地盤沈下したいちばん大きな原因が新幹線の開通であったといっても過言ではない。(川島『新幹線事情大研究』草思社, 1988, p.102)
 この事実は, 実はリニア推進の立場にある京谷たちの上に見た高度成長期の書でさえも認めています:
 この〔第一東海道新幹線開通の〕結果, 大阪, 名古屋の中枢管理機能は東京の逆流効果によって東京へと吸収され, 大阪, 名古屋は地方的中枢管理機能を果たす都市へと再編成されることになった。その意味では第一東海道新幹線によって大阪も名古屋も, 東京都大阪区であり, 東京都名古屋区になってしまったということができる。(京谷他前掲書, p.84)
 そして, 政策評価, 公共計画, 経済政策が専門で千葉商大客員教授, アラバマ大学名誉教授の橋山禮冶郎のフクシマ事故の後の書にも書かれています:
 「リニア開業が首都圏, 中部圏, 関西圏を結集し, 人口6000万人の巨大都市(メガロポリス)を出現させる」と言う人がいる。しかしこれまでの東海道新幹線や関西国際空港の実現が, 関西圏の活性化をもたらしただろうか。かえって, さらなる東京一極集中が進行し, 逆に大阪の拠点性が失われたという事実を直視すべきであろう。この上, 東京‐大阪間の移動時間が短縮すれば, 大阪の拠点性はさらに失われるであろう。(橋山『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』集英社新書, 2014, p.10f.)
 過去半世紀近くにわたって, 公共計画の専門家からジャーナリストそして技術者に至るまでが, 「6000万人メガロポリス」なるものの実際は東京への一極集中をでしかないことを指摘しているのです。そしてほかでもないそういう社会構造がコロナのようなパンデミックにきわめて脆いということを, 私たちはこの間学んだのです。
 すでに破産した大阪都構想に執着している大阪維新の会の面々は, これを読んでどう思うのでしょう。

●新幹線幻想を点検する
 東海道線開通を切望したのは中間の停車駅のある都市もそうですが, 新幹線はそれらの都市に何をもたらしたのでしょうか。
 地域経済の研究者である藻谷浩介は「〔東海道新幹線の停車駅〕岐阜羽島や米原, 三河安城などに代表される駅周辺区画整理には経済的な成功例はないし, 新横浜や新大阪の周辺が地域の都市的な拠点に育ったという事実もない。駅周辺に商業集積の進んだ〔北陸新幹線の停車駅〕佐久平ですら, 市全体の小売販売額はほぼ横ばいで……」と指摘し, 「中央新幹線を土地投機の具としてはならない」と戒めています(上岡直見『鉄道はだれのものか』緑風出版, 2016, p.216 より)。
 つぎのような指摘もあります。
 新幹線が中心市街地に位置する都市も, 楽観はしていられません。…… 長野や金沢, 富山は, まちの消費の中心が新幹線駅にシフトしています。そして駅一帯には, 域外の企業が多数, 進出しており, 消費で落ちたお金が, 域外に流出する可能性も高くなります。昔, 新幹線が開通すると都市間競争が強まり, 敗れた都市からは優位の都市へ消費が流出する, と指摘された時期がありました。いわゆる「ストロー現象」です。…… しかし, 上記のような状況を見ると「21世紀のストロー現象は, 駅中や駅ビルで起きている」可能性がある, と考えています。(櫛引素夫『新幹線は地域をどう変えるのか』古今書院, 2020, p.80)
 東北新幹線でも, 実際には駅中の売店だけが賑わい, 地元の商店街には, 開通によってかえって寂れた処さえあり, そこまでは言わないにしても,それほど恩恵がなかった処も多いようです。JRは大資本であり, その気になって豊富な商品を置いた大きな売店やモダーンでメニューも豊富な食堂を駅中に作れば, 旧来の駅前商店街の零細な店舗や食堂はとても太刀打ちできないのです。
 それだけではありません。この櫛引の書には, 北陸新幹線開通時に「独り勝ち」といわれた金沢について書かれています:
 〔北陸新幹線〕開業直後から報じられたのは, たとえば市民の台所の役割を果してきた近江町市場の異変でした。観光客が「地元の素顔」を見ようと押し寄せた結果, 地元客の足が遠のき, 観光客の買い物対象となる商品を扱っていない店, たとえば青果店には, 店じまいするところが出てきた, といいます。…… 生活空間をかき乱され, また, さまざまなコストが上昇したことの弊害は, 地元紙が報じ, 地元紙系のシンクタンクが実施した県民アンケートでも明らかにされました。オーバーツーリズム(観光公害)が発生した格好です。…… 観光業の隆盛が市民生活にどれだけ恩恵を及ぼしているか, 「どれだけ観光客が増えても, 市民の8割には関係なく, 関心も薄いのでは」と指摘する人もいます。(p.26)
 この櫛引の書は2020年のはじめに出たもので, もちろんコロナを未経験の状態で書いたものです。
 著者・櫛引素夫は社会地理学の研究者ですが, 同書で, 自治体では, 新幹線駅招致までの段階では軒並みに「新幹線○○課」のような組織を作っていたのに, 開通後はそれらの組織がほとんどなくなっている事実を指摘し, 「ひょっとして新幹線を建設することが最重要課題で, その後の《活用》まで検討していなかったのか ……。ほとんどの開通地域では, 行政が, 新幹線開業後に地域や住民がどのような変化に直面し, どのような行動や意識が変わったのか, 総合的に調査していません」と指摘しています(p.92f.)。それぞれの自治体では新幹線駅招致が自己目的化され, 駅ができさえすればそれだけで地域が活性化し潤うというような幻想に支配されていたようです。
 そしてこの書の金沢の指摘の後に, 新幹線開通後の金沢にコロナがもたらしたものについての先に見た『毎日新聞』の記者のレポートがつながります。
 交通網が発達すれば大都市で流行った疫病があっという間に地方に広がること, そういう風な社会がコロナのような疫病にきわめて脆弱であることを, この間私たちは学んだのです。今回のコロナに直面して同様の思いを持った観光地は, とりわけ新幹線が開通したことによって飛躍的にアクセスがよくなり, 外国や県外からの観光客が急増した自治体では, 少なくないでしょう。金沢の例を見るまでもなく, コロナは新幹線幻想からの覚醒を促しているのです。
 最近, 日本政府は「新しい日常」などと言いだしています。東京都は『広報7』で「《新しい日常》が定着した社会へ」といった呼びかけをしています。7月9日の『東京新聞』には「政府は8日, 《経済財政運営の改革の基本方針(骨太の方針)》の原案をまとめた。…… 原案にはテレワークの推進など, 東京一極集中の流れを変える方針も盛り込んだ。新型コロナで人口が密集する大都市のリスクが表面化したことを受け, 従来の生活に戻すよりも《新しい日常》に向けた施策を重視する狙いがある」とあります。とするならば, 6000万人「首都圏」構想など, 真っ先に見直しの対象でなければならないでしょう。
 後に見るようにこのリニア中央新幹線計画は安倍首相によって私企業としてのJR東海の計画から準国家プロジェクトに格上げされたのですが, 一方では政府が国民にたいして「ソーシャルディスタンスを守りなさい」「三密を避けなさい」と説教しながら, 他方で, 6000万もの人たちが1時間で往来できる地域に密集する「首都圏(メガロポリス)」構想なるものを進めるという, とんでもない矛盾に眼をつむることはできません。しかしそれにしても, 現在の人口1億3千万弱が, 21世紀中期には1億余りに減少すると予想されています。その人口の半分以上をその「巨大首都圏」に集中させてできる日本がどれほど歪な社会であるのか, 考えなかったのでしょうか。
 いずれにせよ新幹線招致が地域の活性化と繁栄に直結するという, これまでの「常識」は疑ってみなければなりません。

●技術とナショナリズム
 技術者の立場からは, 雑誌『鉄と鋼』の1993年8号に掲載された鉄道総合技術研究所の主任研究員・鈴木康文の論文「鉄道車両の高速化とその新素材」の冒頭にきわめて率直に書かれています:
 鉄道が自動車や航空機等の輸送機関に対して競争力を高めるためには利便性, 快適性の向上, そして高速化を図ることが重要となる。最近JR各社で鉄道の高速化の試みが盛んに行われ, 新幹線の試験の最高速度記録も次々に塗りかえられており, 1992年9月現在で350㎞/hを超えるまでになっている。ちなみに, 世界最高の速度記録はフランスTGVの1990年に達成した513.5㎞/hである。鉄道利用者にとっては, いかに早く目的地に到着するかが重要であり, そのためには最高速度の向上だけではなく, 曲線の速度向上, 分岐器の通貨速度向上等の課題解決も必要となる。
 要するに「いかに早く目的地に到着するか」を至上目的とし, 自動車や航空機に負けない輸送能力を鉄道に持たせ, 同時に国際的なスピード競争に勝ち抜いて, 日本の鉄道技術の優秀性を世界にアピールすべしということです。
 技術の世界では, とりわけ先端技術の世界では, 実用性・経済性だけではなくこのような形の成果の国際比較の重視というナショナリズムの要素は, 結構大きいのです。先に見たもと国鉄の技術者・京谷好泰の書いた『リニアモーターカー 超伝導が21世紀を拓く』(NHKブックス, 1991)という書があります。その書で著者はもっぱら日本におけるリニアモーターカー開発の独創性が世界水準でトップクラスにあるということの自慢話を展開しています。
 そしてこのような技術者の想いは, 技術立国による国威発揚という20世紀の経済成長期の国家思想にすんなりと取り込まれてゆくことになります。実際, 技術者自身をも捉えているナショナルな要素は, それ以上に政治的にも社会的にも先端技術開発への重点的投資を認めさせる大きな要因になっているのです。
 かつて民主党政権のときに民主党の国会議員が, スパコン(スーパー・コンピュータ)開発で「世界No.2では何故いけないのか」と問うたことがありました。技術的にはNo.1もNo.2も差は紙一重というか、事実上差はありません。しかしそのとき石原慎太郎が, No.1とNo.2は月とスッポンほど違うのだと言っていたのが印象に残っています。国家主義的な思想の持ち主から見れば, つまり「国威発揚」という点では, そういうことになります。そしてそれは俚耳に入りやすいのです。ノーベル賞の授賞者数の国別比較がオリンピックの金メダル獲得数の国別比較と同様に語られる背景です。それはまた「インフラ輸出の大きな武器になる」といった類の「実用性」を付加することにもなります。
 破綻した高速増殖炉もんじゅの建設に日本がいつまでも固執していたのは, よく知られています。もんじゅの計画を放棄すれば核分裂物質であるプルトニウムの備蓄の口実がなくなるというのが, 政治家や官僚の言い分だったのです。その背景には, 原爆製造に必要なプルトニウムの備蓄や核技術の維持をはかるという岸信介以来の潜在的核武装路線がちらついています。ところで, 実際にもんじゅの建設に従事してきた技術者はどうだったのでしょうか。おそらく彼ら技術者の中には, 純粋に技術的なチャレンジ精神だけではなく, 欧米諸国が軒並みに技術的困難からギブアップした前人未踏の高速増殖炉の建設に唯一日本が成功したという実績を作りたいというナショナリスティックな見栄や功名心が何割かは含まれていたのではないかと推測されます。
 そして, JR東海のこのリニア新幹線計画の中に, その手のナショナルな要素が潜んでいること見破り, それがかなり中心的な動機ではないのかと指摘したのが, 先述の橋山禮治郎の書なのです。橋山の語るところを見てゆきましょう(以下、強調は山本による):
 この計画を考え出したJR東海の目的, 経営戦略上の狙いはどこにあるのだろうか。…… 計画概要から読み取れる狙いは「世界一速い鉄道を実現し, 世界の鉄道界をリードしたい」「これまでの鉄道にイノベーション(革新)を起こす」「そのため, これまで開発してきた未踏の新技術である超伝導磁気浮上方式のリニアを中央新幹線で実用化する」ということにあるように思われる。(p.18f. )
 ……
 JR東海自身が中央新幹線の運行方式について「在来線型新幹線と同じでは能がない」と公言している背景には, もうひとつのバイパス新幹線を作ることではなく 「リニアを実現すること」 という真の狙いがあるように思われる。(p.22f. )
 ……
 高速化をどう実現するか, JR東海の考え方は, これまた明快である。在来新幹線方式ではスピードアップに限界がある。世界の鉄道革新の先頭に立つには, これまで巨額の開発費をつぎ込んできた超伝導磁気浮上リニアの実現しかない。(p.27 )
 要するに, かつて世界にほこる新幹線を実現させたように, リニアを世界で最初に実現させ, 最高速度の世界記録を打ち立てて, 世界をあっと言わせて, いまいちど世界の鉄道業界のトップに立ちたい, というわけです。とすれば。リニア中央新幹線の深層にある最大の目標はリニア新幹線を実現させることそれ自体になります。それを見抜いたのは橋山の慧眼です。そして「高速化に邁進することが鉄道事業の本業ではない (p.150)」と諭す氏は, このような深層の意識をきびしく批判しています:
 民間企業とはいえ, JR各社は「公器」であり, 鉄道は自社のためではなく, 利用者のためのインフラである。…… もしも今回のリニア推進の裏に, 試験走行で時速480キロという記録を達成した中国を意識して「時速500キロを達成して世界を先導する」というナショナリズム(覇権国家主義)が含まれているとしたら, いささか恐ろしい気がする。鉄道の高速性は否定すベきではないが, 高速性で覇権を争う意味もないし, またその必要もない。鉄道に求められるのは, 第一に安全性・信頼性であって, 次が利便性・低廉性ではないだろうか。(橋山前掲書p.61f.)

●リニア中央新幹線の闇
 リニア中央新幹線をめぐるこれまでの経緯を簡単に顧みます。
 2007年にJR東海が総工費9兆円全額自己負担でリニア中央新幹線事業化という方針を表明しました。
 2014年に国土交通省がJR東海にたいしてリニア中央新幹線の着工を許可します。そのとき国交省は「交通政策審議会」の「鉄道部会・中央新幹線小委員会」に建設の妥当性の判断を諮問, 小委員会は「計画は妥当である」と答申しました。そのさい小委員会はパブリックコメントを募集し, 888件のコメントが集まっています。そのうち計画の中止や再検討を訴えたものは648件(73%), 計画推進を望む意見はわずか16件, しかし小委員会の家田仁委員長(東京大学大学院工学系研究科教授)は, その圧倒的多数の反対意見を完全に無視する見解を表明しました(樫田前掲書p.53f. , 橋山前掲書 p.153より)。
 そして2015年に本格工事が始まります。
 話が大きく動くのは2016年です。この年, 安倍首相は2045年に大阪まで開通の工程を8年前倒しにして2037年大阪開通を表明し, そればかりか法改正までして総工費のうち3兆円を低利の財政投融資でJR東海に融資することを決めました。
 大阪開通の時期を前倒しにすることは, 大阪維新の会の強い要望だったのです。大阪万博・カジノ誘致・リニア新幹線の3点セットで大阪の経済を活性化するというのが彼らの目論みだったのですが, それはコロナ以前的というよりは文字通り50年前の発想です。ともかく当時の松井大阪府知事と橋下大阪市長は安倍首相と菅官房長官に強く働きかけたのですが, 首相がそれに応じたのは国会運営と憲法改正にむけて維新の会の協力を取り付けるためだと推測されています。
 そして法改正をしてまでの強引なJR東海への3兆円の融資について, 先述の橋山禮治郎は新聞で「リニア計画を引っ張ってきたJR東海の葛西敬之名誉会長は, 安倍晋三首相と非常に距離が近い人物だ。二人の関係があったので優遇されたと見られても仕方がない」と指摘しています(『東京新聞』2017年12月14日)。ここでも安倍首相にまつわる一連の疑惑に見られるネポティズム(お友達優遇)の影がちらついています。
 それにしてもこれほど大きな国家的問題が公での議論もなく, 政治党派間の愚劣な取引や私的な情実が絡んでいるのだとすれば, とんでもないことです。
 ともあれこうしてリニア中央新幹線は闇のなかで準「国策」に格上げされたのですが, 早くも翌2017年には, 判で押したように, トンネル工事の受注をめぐって清水建設・大成建設・鹿島建設・大林組のゼネコン大手4社の談合が発覚しています。大手建設業にとって, 9兆円もの国家プロジェクトはきわめておいしい話だったのです。もっとも2015年の段階では, ゼネコン関係者は, リニア新幹線は従来の新幹線事業と異なりJR東海単独の事業ゆえに, 予期しない建設費の増大があっても補填されない可能性があり, 受注には慎重にならざるを得ないとコメントしていたのです(「それでもリニアには参画しない」『週刊プレNews』2015年12月28日号)。とすれば国家プロジェクトになった効果はきわめて大きいようです。このことは, 2020年に予定されていた東京オリンピックの準備とともに大手建設会社に絶好の金儲けの機会を作ったのであり, そのことが東日本大震災の復興にどれだけ妨げになったかは, 言うまでもないでしょう。
 そしてこの間, JR東海は関連する地域の住民にまともな説明もしてこなかったのです。何回かの説明会でも, 質問はひとり3回に限定し, 時間が来れば質問希望者がいても機械的に打ち切るという一方的で形骸化したもので, それは話し合ったというアリバイ作りのためのものでしかありませんでした(この間の経緯については樫田の前掲書に詳しい)。
 そして今回, 静岡県では, 南アルプスの深部を貫くトンネルが県民の生活と農業と産業にとって不可欠な大井川の水流にどのように影響を与えるのかについて納得のゆく説明が与えられていないとして, 県の川勝知事が工事着工を拒否しているのです。知事の任務が県民の生活と県の産業を護ることであるとするならば, まして良質の水を大量に要する茶の栽培が静岡の主要産業のひとつであることを鑑みるならば, それは当然の態度でしょう。
 もちろん途中の停車駅が地域の活性化につながるといった宣伝によって工事を認めた自治体も多くあります。『ニッカンスポーツ』の2019年12月5日の「政界地獄耳」には「リニアと静岡 夢と戒め」の標題で書かれています:
 3日, 静岡県掛川市はリニューアル工事に伴う大井川の流量減少問題をテーマとした「掛川の水について考えるシンポジウム」を開いた。静岡新聞によれば基調報告でリニア問題を統括する静岡県環境保全連絡会議本部長の副知事・難波喬司はリニア県内区間のトンネル湧水が県外に流出しても, 大井川の水が減らないとするJR東海社長・金子慎の主張を「全く理解できない。流出した水は決して大井川に戻らず, 水系全体の水は必ず減る, 話にならない」と批判している。
大井川の水系を産業, 生活の基礎としているいわゆる利水者は00年5月に新東名高速道路のトンネル掘削工事で, 簡易水道や沢が枯れた歴史を不安視するからだ。日本道路公団に工事と水枯れの因果関係を認めさせるまでの苦労を多かったからこそ, 工事前に話し合いたいのだ。…… 今後, カジノなどに自治体は大規模施設誘致に活路を見いだそうとするだろうが, 静岡の取り組みは全国の自治体の浮ついた“夢のような”計画の戒めとなるだろう。
 スポーツ新聞だからといって侮ってはいけません。こういう的確な指摘もあるのです。
 2016年5月, JR東海のリニア中央新幹線建設に反対する沿線1都6県の住民ら700人以上が, 国土交通省のリニア着工認可の取り消しを求めて東京地裁に提訴しました。その訴訟の原告団長・川村晃生は語っています:
 人口減少社会で, 時速500キロで移動する必要があるのか。高度成長時代期の価値観のままに走り続けていることに問題はないのか。自然破壊や財政問題などの情報はオープンになっていない。将来つけを払うのは国民。すべての情報を明らかにして国民全体で議論しなければいけない。(『東京新聞』2016年5月17日)

●リニア新幹線の根本的な問題
 リニアは先に言ったように, 高速であるために空気抵抗がきわめて大きく, それに抗するために大きな電力が必要とされるのですが, それだけではありません。通常のモーターは円形に巻いた外側のコイルの中を回転子が磁石の極(南極と北極)間の斥力と引力で回転するものですが, その外側のコイルを線型に伸ばして中の回転子を浮かせながら前に進めるのがリニア(線型)モーターです。そのため「マグレブ(magnetic levitation:磁気浮上車)」とも略されます。その際, コイルを超伝導コイルにすることで, コイルの発熱によるエネルギーのロスを防いでいます。しかしそのためには極低温が必要で, その低温を維持するためにも電力が要求されます。
 また超伝導コイルのためには, いまや世界中で取り合いになっているニオブやチタンやタンタルやジルコンのような稀少金属を多量に必要とします。
 エネルギー(電力)と資源のこの大量消費が第1の問題です。
 日本でリニア鉄道を最初に考案したのは, 国鉄の技術者であった川端俊夫と言われています。その川端はまた, リニアの問題点としての電力浪費に最初に気づいた人物でもあります。1989年8月24日の『朝日新聞』の「論壇」に北海学園大講師・鉄道工学, 元国鉄技師の肩書で, 氏が寄稿しています。見出しは「電力浪費のリニア再考を 一人当たりでは新幹線の40倍にも」とあり, 本文は「JR方式のリニアモーターカーは, その消費電力の厖大さが, 最大の欠点なのである」と始まり, 最後は「JR方式のリニアモーターカーの建設は巨大な無駄に思われる」と結ばれています。
 この川端の寄稿について, 翌年に交通通信社から出た『時速500キロ“21世紀”への助走』には「反響は大きく‘沿線’自治体, エンジニア, 投稿者と同じ国鉄OBなどから‘本当にそうなのか’といった質問や, リニア・マグレブに‘マイナスの関心’を抱く層から疑問や是非論が出てきた。‘中央リニアエクスプレス構想’を進めるJR東海は ……‘虚をつかれた’感じで, 慌てた」とあります(p.80)。この記述は, この時点までJR東海が消費エネルギーのことを真剣に考えていなかったことを暴露しています。
 そんな次第で, 10日後の9月4日の「論壇」に鉄道総合技術研究所理事長, 元国鉄常務理事という肩書の尾関雅則の反論が「リニアの電力浪費は誤解 全消費電力は新幹線の約3倍で設計」という見出しで投稿されました。40倍と3倍で主張が大きく違っていますが, それは川端の最大値にたいして, さらに一人当たりの値を求めるさいに宮崎の実験での少人数を乗せて走ったケースで比較している(つまり小さな数で割っている)のと, 尾関の積分値つまり平均値にたいして, それを営業運転か始まったのちの相当大きな想定乗客数で割った値で比較したことからきた違いです。
 尾関によると「東京-大阪間のシステム設計は, 時速500㎞, 1日平均輸送密度10万人(東海道新幹線は現在16万人)という想定で考えています。…… エネルギーの消費量を把握するうえで最も重要な全電力消費量については, 乗客一人あたり約90WH〔ワット時〕を計算しており, これは新幹線の約3倍」とあります。「1日平均10万人」というのは随分楽観的な想定ですが, それ以後, 「これまでの新幹線の3倍」という数値が語り継がれるようになりました。実際には「1日平均10万人」はとてもゆかないと予想されますから, おそらくこの値はかなり少なく見積もった消費量と思われます。といっても、これまでの新幹線の3倍という量でさえ大変な電力消費量なのですが, 橋山の前掲書には「産業技術総合研究所の阿部修治氏の推定では, 16両編成で時速500キロ走行の場合には新幹線の4~5倍の電力が必要だという」とあります (p.139)。
 この尾関の「論壇」にはさらに「現在, 東京-大阪間には東京, 中部, 関西の三電力会社あわせて総発電量9100万KW(キロワット)の発電所があり, …… リニアモーターカ―の全消費電力はその0.6%にすぎず」とあります。つまりリニアの消費電力は55万KWということです。他方, 先述の樫田の書(p.61)には, 東京-大阪間が開通した後のピーク時, 1時間8本として, 74万KWとあります。尾関の値は平均値, 樫田の書の値は最大値と考えられます。74万KWは事故を起した福島第一原発・第2号機の出力とほぼ同程度です。つまりリニアを動かすためには, 現在の大型原発の標準である100万KWの発電量の半分から四分の三の電力が必要ということです。しかしやはり橋山の書には「山梨県立大学学長の伊藤洋氏は, 同時に10両編成が走行する場合には, 原発3基程度が必要だと試算している」ともあります (p.139)。 どのデータを信用するにせよ, いずれにしても単一の企業の単一の路線としては破格の電力消費量であり, 福島の原発事故以降の省エネの時代にまったく逆行した存在と言えます。
 先述のJR東海の葛西敬之は, 福島の原発事故のわずか二カ月半のちの2011年5月24日に『産経新聞』で「原子力の使用は, リスクを承知の上でそれを克服する国民的覚悟が必要である。原発はすべて速やかに稼働させるべき。この点に国家の存亡がかかっている」という旨のこと言っています。彼はリニア新幹線にとって原発増設が不可欠なことを知っていたのでしょう。橋山の書で断定されているように「在来新幹線よりはるかに多くの電力を必要とするリニア新幹線は, 原発の再稼働か新増設に依存することを前提として計画されている」のです(橋山前掲書 p.12)。
 リニア中央新幹線の第2の問題は, その大規模な自然破壊です。
 全線の9割近くがトンネルであり, そのための工事が地下水系にどのような影響をあたえるかはもちろんわかりません。実験線のトンネル工事でも沢や井戸の枯れが生じています。南アルプスの深部(もっとも深い処では地表から1400メートル下)にトンネルを掘ると, 大井川にどのような影響がでるかは, 本当のところ誰にもわかりません。JR東海にしても, いくらアセスメントをしてもどうなるかはわからないというのが本音でしょう。しかし自然破壊において結果が出たときにはもう元には戻せないというのは, 高度成長の過程で日本が多くの犠牲をはらって学んできた事実です。だから結果がどうなるかわからないのにトンネルを掘るというのは, ロシアンルーレットのようなもので, 決して受け入れられないという静岡の知事の態度は当然でしょう。
 もちろん, 自然破壊はそれだけではありません。
 東京-名古屋約276㎞, うち90%近くの247㎞がトンネルで, しかもリニアモーターカーは速度が大きくてトンネル内, とくに出入口での風圧の変化がきわめて大きくなるため, トンネルの断面積はこれまでの新幹線のものより大きく12m×8.3m=約100㎡(平方メートル)にとられています。それはこれまでの新幹線のトンネルの約3分の4倍で, ようするに無駄の多いシステムなのです。そしてそれだけの長さのトンネルを掘れば, 途中に約60箇所ある非常口(地上までの直径30mの竪穴)やその他, 途中の駅や変電施設の分も含めると, 約3000万㎥(立方メートル), つまり東京ドーム300個分に相当する厖大な量の土砂を取り出さなければならないわけですが, その残土の捨て場も完全には決まっていません。一部は大井川上流の沢に高さ70m、長さ数100メートルにわたって投棄する案が出されていますが、それ自体が多大な自然破壊であり、しかも大雨のときには土石流の原因となる危険性があります。
 ダンプカー1台の搭載容量を多い目に10㎥と見積もれば300万台――「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会議」の試算では320万台(『東京新聞』2016年5月17日)――, この土砂の搬出に10年かかるとして, 1年の稼働日を300日とすれば, 単純計算で1日1000台のダンプカーが必要です。しかし実は, トンネルの断面積はコンクリートで固められたときの断面が上記の値で, 実際には縦横それぞれ上記の約1.3倍くらいを掘ることになり, この1.7倍くらいになります(樫田の前掲書p.258では12年間として1日1700台)。もちろん, この他にほぼ同量のセメントをふくむ建設用の資材・機材や人員の運搬があり, 上岡直見の書には「たとえば工事6年目において, 機材・資材・残土運搬の車両が年間289万台走行と想定されている」とあります(上岡前掲書 p.210)。それは1年365日として1日平均約8000台で, これだけのダンプカーやトラックがそれまで静かであった山村地帯や農村地帯あるいは市街地を行き来することになります。そのことだけでも排気ガスで大気を汚染し, 騒音とともに地域の景観を破壊し動物の生態系に影響を及ぼすでしょう。交通事故の心配もあります。そしてその長大なトンネルの建設に必要とされる膨大な量のセメントを生産するためにも, 原料の石灰岩を求めて国内の幾つもの山が切り崩されてゆくことになります。こうして残土の捨てられる先だけではなく, 石灰岩が採取される処でも, 自然破壊は進行します。
 上述の上岡の書にはさらに, 近年問題になっている CO2(炭酸ガス)の排出量が算定されています。それによりますと, 運転にともなうCO2の排出量は, 東京-大阪間の航空機の利用者がすべてリニアに移ったとすれば年間25万トンのCO2が節減されるが, 他方で9兆円の工事にともなうCO2の排出量は工事全体でその節約量をはるかに上回る3480万トンと推定されるとあります。
 自然破壊については, その他にもいろいろの問題がありますが, その点はリニア・市民ネット編集『危ないリニア新幹線』(緑風出版 2013)を参照してください。
 第3の問題は, 強力な電磁場による人体への影響が危惧されています。この点について, 紫外線・X線・γ線という振動数の大きい電磁波の危険性はすでによく知られていますが, それ以外の強い電磁場が人体にどのような影響があるのかは, いまだはっきりしたことはわかっていないようです。 ということは一種の人体実験ということになるわけです。
 そして第4には, 事故対応の問題, つまり安全性の問題が考えられます。日本のトンネル技術は優秀だそうですが、最深部で地表から1400m、地下千メートルを超えるような深いそしてきわめて長いトンネルは, 未経験の分野でしょう。とくに南アルプスは造山活動の激しい山岳で、直下には中央構造線と糸魚川‐静岡構造線(フォッサマグナ)という二つの大きな活断層が走っています。たとえば地震で全線ストップしたときどうなるのか、陥没や出水の危険はないのか、あるいはトンネル内で火災が発生したときどうなるのか。停電の危険はないのか。 脱出坑では400m近くを登らなければならないのもあるようですが、脱出用のエレベータは正常に動くのか, それも3人や5人ではありません,年寄りや幼児も含めて数百から千人近い乗客の避難が対象です。これらの事柄にたいしてJR東海からはかならずしも多くの人が納得できるような説明はありません。「絶対安全」と言う事業者からの呪文は福島の原発事故以来信用をなくしているのです。火災等のアクシデントのさいに無事地上に到達できても, 冬場であればそこは雪と氷に閉ざされたアルプス山中です。先に見た上岡直見の書にはじつにリアルに書かれています:
 外部へ脱出するまでの困難さが現行新幹線とは大きく異なる。この地区は「二軒小屋」地区と呼ばれ工事用の坑道の掘削が予定されているが, 開通後には脱出径路として利用される予定である。しかし脱出口に到達しても水平距離2㎞・高低差200mの坑道を人力で登攀することになる。さらにトンネル外に脱出できても無人の山中であり,冬期であれば経験も装備もない一般利用者がそこにいるだけで生命の危険が生じる。救援のバスや緊急自動車はアクセスできないから, むしろ航空機が山中に墜落したような状況が発生する。(『鉄道はだれのものか』p.204)
 そして最後に, リニア中央新幹線はそもそも経済的に成り立たないであろうという点にあります。これは企業としては根本的で決定的な欠陥と言えます。この点は, 先の私自身の以前の文章からの引用ですでに明らかですが, コロナを経験した現在, そこで指摘した点はより深刻な問題となっています。
 先に引用した昨年の文章に私は「会議など現地にゆかなくともできる時代なのです」と書きましたが, 実際, コロナで在宅勤務・テレワークが普及し, 直接出社して顔を突き合わさなくとも職場の討論ができたのです。東京の本社と関西の支社の会議でも, 地方の取引先との打ち合わせでも, 運賃や宿泊費や時間のかかる出張が不要であることを, 経営者は知ったのです。大学や学校でもオンラインの授業が一挙に広がったのであり, 従業員や労働者サイドでも、子供のときからパソコンになじみそのような教育を経験した若者がつぎつぎ社会にでてゆくわけです。コロナを契機に社会のこのIT化傾向はさらに進むでしょう。
 それでなくとも人口減で, さらには高齢化で, 新幹線移動需要の大部分を構成する生産年齢人口はそれ以上の割合で減少することが予想されています。新幹線にかぎらず, 航空機にせよ, 自動車にせよ, 国内旅客輸送量は横ばいないし減少が予測されます。さらにコロナによるテレワークの普及を考慮すれば, 東京-名古屋‐大阪間の新幹線利用者は, 従来の新幹線でも減少すると見るべきです。
 また「外国からの観光客」の件について, 2019年8月2日の『毎日新聞』の「仲畑流万能川柳」に「味わいがあると思えぬリニア旅」とありますが, 先に書いたようにそのとおりで,東京‐名古屋間の移動に観光客が地下のリニア中央新幹線使用を積極的に選ぶとは思えません。そればかりか, そもそも外国からの観光客はコロナで大幅に減少しましたが, それがコロナ以前の水準に今後回復し, さらに右肩上がりで増加し続けることは考えにくくなっています。
 上岡直見の書には書かれています:
 リニア新幹線事業に関しては大半のメディアが「日本の技術は世界一, 夢のプロジェクト」として肯定的に取り上げている。しかしその多くはJR東海の発表を無批判に請け売りする内容にとどまる。冷静に検討すると問題点が多く, 物理的な危険性とともに事業性でも疑わしい面が多く, 事業としての破綻をきっかけにJR東海あるいは日本の鉄道全体の崩壊を引き起こすおそれがある。(『鉄道はだれのものか』p.200)
 先に見た2014年の書の末尾で「‘第三の鉄道’をこの時代に導入することは国家百年の愚策です(p.203)」と語った橋山禮治郎もまた, 2017年にあらためて「沿線各地で上がる反対の声に, 政府もJRも率先して答えなければならない」と指摘し, 自身の予測と思いを語っています:
 リニアの高速性が人口減の社会をむかえる日本に果して必要か, という原点に立ち返る必要がある。今のリニアはJR東海だけが進めたいと思っているだけで, 決して国民は望んではいない。完成してもストロー現象で, 地方がさびれるおそれが高い。そんな鉄道に何兆円も費やすべきなのか。このままではぼろぼろの日本がまっているだけだ。(『東京新聞』2017年12月14日)
 これまでJR東海は, 東海道新幹線というドル箱路線を持っていたために, 国鉄から引き継いだ相当の借金を抱えながらもやってゆくことができました。しかしそれでも現在, 御殿場線, 身延線, 飯田線等の駅を無人化するなどの合理化を進めています。明治以来「国鉄」として築き上げられてきた日本の鉄道網は, 社会的に共有される国民の貴重な財産なわけですが, 採算が合わないという企業の論理だけで, いくつものローカル線が廃線にされています。
 JR東海が二本の競合する新幹線を抱えたことによって経営的に行き詰まったなら, そのしわ寄せがJRの労働者とJRの利用者に押し付けられるだけではなく, 保守がおろそかになり事故を招来するという危険も考えられます。高度成長時代に建設されたインフラは、半世紀を経て老朽化が始まっています。そしてまた2017年12月11日には東海道・山陽新幹線「のぞみ」の重要部である台車のひび割れという大参事寸前の事故がありました。それ以前に, 新幹線ではありませんが, 度を越した合理化と過酷な労務管理そして私鉄(阪急・宝塚線)との過剰な競合による無理な高速化に起因する2005年4月25日のJR西日本・福知山線の運転手・乗客の死者計107名、負傷者562名という大参事もありました。
 4年前の上岡直見の「日本の鉄道全体の崩壊」, あるいは3年前の橋山禮治郎の「ぼろぼろの日本がまっている」という警句は, 安易に聞き流してよいものではありません。
 上岡や橋山の警句は, コロナ以前に語られたものですが, コロナはそこで語られた諸問題にあらたにより深刻な要素を付け加えたことなります。かつて疫病の流行は, しばしば起こったにせよ概して局所的に封じ込められていたし, 軍隊の移動というようなことがなければ拡大のテンポもよりゆるやかでした。しかし資本主義がグローバルに展開し, 平時からより多くの人がより迅速により遠くへ容易く運ばれるようになった21世紀になって, 今回のコロナは, 技術的先進国と言われた国々で恐ろしいテンポで拡大し, 医療崩壊の危機をもたらしています。コロナはリニア中央新幹線の類のコロナ以前の計画の全面的な見直しを私たちに突き付けているのです。
2020年7月
(やまもと・よしたか)



【お知らせ その1】
代島治彦監督の新作『きみが死んだあとで』製作支援金(カンパ)のお願い

チラシ表_page0001_1_1

 代島治彦監督の新作「きみが死んだあとで」は2021年春の公開をめざして、製作を進めています。
 前々作「三里塚に生きる」前作「三里塚のイカロス」と同様に確実に作品が完成する予定が立ったところで、製作支援金(カンパ)のお願いをすることにしました。
 後半の製作予算となる編集費、ポストプロダクション費(音楽制作、映像調整、整音・音響効果、上映素材制作、英語字幕制作など)が約400万円、公開に向けた宣伝予算が約300万円。
 後半の総予算のうちの「500万円」を最終目標額に製作支援金(カンパ)を集める活動を開始します。下記要項をお読みいただき、新作「きみが死んだあとで」へのご支援を心よりお願い申し上げます。
きみが死んだあとで製作委員会
製作支援金〈種類と特典〉
個人支援一口以上:10,000円以上
 特典①=映画本編エンドロールにお名前を掲載
 特典②=映画パンフレット・DVD進呈
団体・法人支援一口以上:100,000円以上
 特典①=映画本編エンドロールに団体名・法人名を掲載
 特典②=映画パンフレット・DVD進呈
〈「お名前掲載」に関する注意事項〉
映画本編エンドロールにお名前・団体名・法人名を掲載したい方は、映画製作スケジュールの都合上、2020年8月7日(金)までにご支援ください。
この期日以降にご支援いただいた方は映画公式HP上にお名前・団体名・法人名を掲載させていただきます。
製作支援金〈振込方法〉
◎「郵便振替」の場合(赤色払込取扱票を使用)
(※赤色払込取扱票は加入者が発行しますので、下記にお問い合わせ下さい。)
口座番号  00100-2-604909
口座名称  きみが死んだあとで製作委員会(キミガシンダアトデセイサクイインカイ)
◆赤色払込取扱票に〈お名前・ご住所・ご連絡先・金額〉をご記入の上、お振込みください。
◆映画本編エンドロールへのお名前掲載を希望されない方はその旨をご記入ください。
◆ニックネームでのお名前掲載を希望する方はニックネームをご記入ください。
◎「銀行振込」の場合
銀行名   三井住友銀行
店名    三鷹支店(店番号247)
普通預金  口座番号7486673
口座名義  きみが死んだあとで製作委員会(キミガシンダアトデセイサクイインカイ)
◆上記銀行口座へお振込みください。
◆ 銀行振込後、下記メールアドレスまたはFAX番号まで、〈必須なお知らせ事項〉〈関連するお知らせ事項〉をお知らせください。
〈必須なお知らせ事項〉
① お名前 ②ご住所 ③電話番号またはメールアドレス ④振込日 ⑤金額
〈関連するお知らせ事項〉
映画本編エンドロールへのお名前掲載を希望されない方、ニックネーム掲載を希望の方、また領収書送付が必要な方はその旨もご記入ください。
お知らせメールアドレス sukoburukobo@gmail.com
お知らせFAX番号 0422-36-6010
《お問合せ》
きみが死んだあとで製作委員会
〒180-0013 東京都武蔵野市西久保2-15-22 スコブル工房内
E_mail:sukoburukobo@gmail.com
TEL&FAX:0422-36-6010
緊急連絡先:080-5407-8739(代島携帯)

長編ドキュメンタリー映画
きみが死んだあとで
2021年公開予定
製作・監督・編集 代島治彦
撮影 加藤孝信
音楽 大友良英
制作 スコブル工房
企画・製作 きみが死んだあとで製作委員会
日本/2021年/4K撮影/204分(予定)

【お知らせ その2】
「続・全共闘白書」好評発売中!


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A5版720ページ
定価3,500円(税別)
情況出版刊

(問い合わせ先)

『続・全共闘白書』編纂実行委員会(担当・前田和男)
〒113-0033 東京都文京区本郷3-24-17 ネクストビル402号
TEL03-5689-8182 FAX03-5689-8192
メールアドレス zenkyoutou@gmail.com  


【1968-69全国学園闘争アーカイブス】
「続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このページでは、当時の全国学園闘争に関するブログ記事を掲載しています。
大学だけでなく高校闘争の記事もありますのでご覧ください。



【学園闘争 記録されるべき記憶/知られざる記録】
続・全共闘白書」のサイトに、表題のページを開設しました。
このペ-ジでは、「続・全共闘白書」のアンケートに協力いただいた方などから寄せられた投稿や資料を掲載しています。
知られざる闘争の記録です。



【お知らせ その3】
ブログは隔週で更新しています。
次回は8月7日(金)に更新予定です。