
参議院議員選挙が7月11日に行われる。
民主党の衆議院選挙でのマニフェストの成果を巡って、民主党政権にどんな審判が下されるのか注目される選挙であるが、41年前、東京では東京都議会議員選挙が行なわれ、北小路敏氏(写真は「前進」から転載)の「革命的議会主義」という言葉が注目を集めた。
新聞にこの時の選挙の様子が載っているので見てみよう。
【新左翼に都民の審判どう下るか ゲバ棒をマイクに持替えたが】毎日新聞 1969.7.14(引用)
『<「天下とる手段さ」 演説会は人気上々>
低調といわれ、雨にたたられどおしの都議選だったが、投票率は59.74%を記録、4年前の、あの熱っぽい“刷新都議選”をともかくも上まわった。
きょう14日の開票結果が注目されるが、なかでも関心を集めているのが、ゲバ棒をマイクにかえ、ヘルメットをバラの花にかえてひとり気をはいた元全学連委員長北小路敏候補(杉並区)。
個人演説会に三千人を超す聴衆を集める人気ぶりは他候補を圧倒していたが、議会主義を公然と否定する“新左翼”の“片手にゲバ棒、片手に投票用紙”戦術に対して都民がどういう審判を下すかは興味のつきないところ。
市街戦から選挙戦へと進出した彼らの思想と行動を追ってみた。
「議会主義を否定する三派全学連の指導者が、なぜ議会に出ようとするのか、ふだんの行動とは矛盾しているのではないか」4年前の刷新都議選、2年前の補欠都議選、そして今回と三たび立候補した北小路候補に寄せられる、右からも、左からも共通した疑問、ないし批判の典型である。
しかし、北小路候補やそのバックの革命的共産主義者同盟や全学連中核派はこう答える。
「われわれはアナーキーでも、反議会主義でもない。革命的議会主義だ」と。
趣味で社会運動をやっているのではなく、やがて天下を取ろうとしている以上、議会にも一定の勢力基盤を持ち、議会の中でも闘っていこうとするのは当然。
「議会」などという制度に信頼をおいたり、議会を通じて政権を取るようなプロセスは考えていない。
それどころか、いずれは議会のような不便な制度は廃止すべきだとさえ考えているが、いまはともかくその議会にも勢力を出せるよう運動を進展させることは必要だというわけ。
「議会は革命のための補助的な陣地」というのだ。
民衆が勝利をおさめるにはなんでもやらなければいけない、というので、これまで学生運動からスタートして、労働運動(反戦)、市民運動(ベ平連)、農民運動(成田空港反対)、さらに高校生運動へと幅を広げてきたが、これにさらに議会闘争が加わると、彼らは主張する。
さらに爆発する学生運動の起爆剤となった42年10月の第一次羽田事件以来の「革命的左翼の成否を住民大衆に問い、70年闘争への民衆の承認をとりつける闘いでもある。」と革共同の機関紙“前進”は強調する。
中核派内部でも2年前までは立候補是非をめぐって激しい論争が繰返されたが、いまは「70年」を前に、この都議選に勝つかどうかが、大きな目標となり、疑問を生じさせないほどになった。
同じ反日共系全学連各派の中でも、革マルや社学同、そのほかは北小路選挙にそっぽを向いたまま。
「ぼくを支持するような人はふだんは投票ぎらい、棄権主義者なのでやりにくい」とゲバ棒からの転換のむずかしさを告白するが、中核派だけは全力投球。
過去2回の選挙でスクラムを組んだ本多延嘉書記長は破防法で捕われの身、そのほかおもだった幹部も捕らえられたり地下にもぐっての“破防法選挙”だが、学生たちは“現地闘争本部”を作り、ゲバ棒を捨てて全国から大挙してかけつけた。(中略)
彼らに裏方ばかりやらせては、と、北小路候補と60年安保以来、一緒に運動を進めてきたあるベテランは自ら“炊事班長”をかって出て選挙期間中、にぎりメシをにぎりつづけた。
選挙の後半戦、せりあう候補の間でポスター破りが盛んになると、全学連の支援学生たちは徹夜で街頭パトロール。
ゲバ棒や暴力には慣れっこのはずの彼らだが「どんなことがあってもゲバルトをふるうな。ポスターをはがされてもはがし返すな」ときびしい注意を受けていた。
「闘争にはそれぞれの形態がある。街頭闘争の戦術と選挙闘争の戦術とは違う」という理由からだった。(中略)
辻説法と演説会の一本やり。胸に赤いバラの花をつけ“進歩的文化人”や多数の“三派シンパ”を動員してのソフト・タッチの選挙戦。
その人気は大したもので、駅前演説でも千人ぐらいの聴衆はすぐに集まった。
開票翌日の15日には法政大で同派の全学連大会を開く。当選第一声をそこでぶち上げようというわけだ。(後略)』
1969年6月、明大和泉校舎(杉並区)では、正門を入るとドーンと中核派の大きな立看板があり、商学部のI氏が北小路敏氏の選挙を応援するアジ演説をする光景が見られた。
演説会では米倉斉加年氏(俳優)や野坂昭如氏(作家)などが応援演説をしたが、北小路氏は1万5千票余で惜敗した。
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