
(No277-2の続きです)
もう一つは、中に居る人たちも、お互いが、いろいろな情報を、見た人が感情的になるように使われているんだ、プロパガンダに使われているんだということを、頭のどこかに入れておく、少し冷静に情報を見るようになれれば、たぶんあそこまで悪化した状況にはならないと思います。』
上杉隆
『アラブの春によって、多くの人々がSNS、特にインターネット、ツイッターやフェイスブックの力を使えるんだ、ということに気付いた。これはある意味いいことだと思いますね。人民に力を、という状況になった訳ですが、そこから使い方を若干最初は間違える。つまり無法地帯で自分の感情をコントロールできずにそれを使うということは、それが過度に行き過ぎるとコントロールができない。また、それが政府や権力側に利用されるということになってしまった。
そこを食い止めるのは、本来ならばジャーナリズムの役割なんですが、日本ではジャーナリズムがそういう役割を果たしていない。
実は、重信さんがこの前の日曜日に日本を離れて帰国したんですね。基本的にあちらに戻るということなんですが、ずっとギリギリまで話していたんです。これはSNSの使い方は日本はまずいなと、むしろリテラシーもなく、メディアにある程度慣れている中東やそちらの方がまだ、この部分はメディアという武器をうまく使っているけど、日本人の場合はそういうのを使うのがへたなので、取り扱いができないので、危険な方向に行ってしまうのではないか、ということを丁度重信さんと話したばかりだったので、この本に書かれることも含めて、アラブの春の正体、非常に印象的ですね。』
アナウンサー
『うまく使えないと危険な方向に行ってしまうのではないか、と危惧されているということなんですが、逆にSNSをうまく使うと紛争、内戦を止めることができるのでしょうか。』
上杉隆
『若干そういう傾向があるのは、中国でそう思いましたね。中国でのツイッターは、日本での報道は過度の反日を煽るとか、そんな風になっていますが、実はそれは多様性を踏まえているんですね。
今までの中国のメディア環境、言論空間と違って、多様性を踏まえたことによって反日を煽る層もあれば、いや違うだろう、お互いにもっと冷静になろうというような、むしろ日本の方が若干そういうところが少なく、反日を煽っている中国、つまり反中に行くべきだという。それに対して中国と仲良くしようという声を無理やり抑え込むような均一な言論空間が芽生えてきてしまっている、という意味では、むしろ多様性を認めるようなメディア空間にしていくというのがメディア戦争を止める唯一の道ではないかと思います。』
アナウンサー
『ジャーナリストで中東問題専門家の重信メイは著書「アラブの春の正体」で民主化革命とメディアの関係について解説されています。』
以上、番組の関連部分を掲載した。
ここで紹介されている重信メイさんの著書「アラブの春の正体」(写真)は、昨年10月に発売された本である。メイさんは「中学生でも読めるような本として書いた」と言っていたが、その意図どおり分かりやすい本になっている.。
本のあとがきで、メイさんはこう書いている。
『パレスチナ問題は宗教的でも民族的でもなく、「人間的な問題」です。人間として絶対に許してはいけないことがパレスチナで起こっていることをわかってほしいのです。
私がこのあとがきでパレスチナ問題を取り上げたのは、この問題と「アラブの春」は決して無関係ではないからです。
チュニジアやエジプトの人々が訴えたのは、まさに「人間的な問題」です。
だからこそ、「アラブの春」を利用して権力掌握のために住民をないがしろにして内戦を起こすような人々のことを許すことはできません。私が本書を書こうと思ったのは、まさにその「事実」を日本にいる人たちに知って欲しかったからです。』
この本は松岡正剛氏の書評サイト「千夜千冊」でも取り上げられた。(以下書評の一部引用)
<本書はチュニジアやエジプトに連続しておこった「アラブの春」を、欧米や日本のメディアが「民主化」への前進だと称えたことに大いなる疑問を呈した一冊である。わかりやすく書くことをこころがけているようだが、中東の空気を肺腑の奥まで吸ってきた者ならではの説得力だった。>
メイさんは現在レバノンにいるが、日本にも時々帰ってくるので、その時に、最新の中東情勢などについて話を聞いてみたいと思う。
※「アラブの春の正体」-欧米とメディアに踊らされた民主化革命ー
発行:角川書店 定価:781円+税
(終)
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