
(文書が長くブログの字数制限を越えるため、No285-1とNo285-2に分けて掲載します。)
新聞で見る1969年シリーズの番外編。今回は「音」です。
当時、ソノシートと言われるビニール製の「レコード」が雑誌などに付録で付いていた。
音質はレコードよりは落ちるが、まだカセット・テープなども一般的ではなかった時代、安価で音が聞ける付録ということで70年代前半ころまでは普及していた。
「ソノシート」というのは「朝日ソノラマ」が商標登録した名前ということだが、今ではビニール製レコードの代名詞のようになている。
この「朝日ソノラマ」について、「朝日ジャーナル」の記事があるので紹介する。
「歴史の証言としての音 「朝日ソノラマ」と大学闘争」【朝日ジャーナル 1969.7.13】(引用)
『この1年間、大学問題は、大きく燃えひろがり、週刊誌、月刊誌を問わず、相次いで特集を組んでいるが、その中でも異色を放っているのが「朝日ソノラマ」7月号の「大学を告発する」である。(筆者注:写真上段)
同誌の特色は、音と活字の立体的編集だが、その「音」という「武器」を最大限に生かして、大学問題にメスを加えているのである、活字面では吉田光邦(京大人文科学研究所助教授)、師岡佑行(元立命館大講師)氏らの論文を並べ、これといった特徴はない。
だが、「音」になると、同誌の独壇場である。まず、導入部は、1・18、19の東大闘争のノイズで始まり、6・15反戦・反安保日比谷集会での山本義隆・東大全共闘代表の演説、佐藤首相の大学立法に対する「決意」、奥田京大総長の声と続く。
さらには金田一晴彦、天野貞祐、村松剛、末川博氏らの発言、これに反駁する山本代表の声という構成で、これにかぶせて5月29日に東京・文京公会堂で開かれた「大学を告発する・全国大学教職員報告集会」の録音、奈良本辰也氏の発言、東大教養部での三島由紀夫氏と全共闘との「対決」と続き、山本代表の録音で「総括」する。
<精神の腐敗をえぐる・・・>
なかでも潜行中、某所で録音したという山本代表の発言には迫力がある。「教育第一ということを前面に押出すべきだ」と主張する天野氏、全共闘の闘争を「集団ヒステリーの発散」ととらえる村松氏らの発言に対し、山本代表は「学生の問うことに真剣に答えろ。答えられなければ真剣に考えるべきだ」と、語気も激しく切返す。
また、最後の「総括」では、さらにきびしく、次のように告発する。
「問われている大学と教育者の問題というが、教育者以前の人間の倫理の問題をいわなければならない。東大の教授を目のあたりに見てきて、“倫理オンチ”というか、居直りが横行して、その上に立って教授会という無責任体制ができていると言わざるを得ない」
こうした前提に立ち、「教養の独占者」としての教授=教育者たちの、もたれあいによる相互無批判性、そこから生まれる精神の腐敗を鋭くえぐっている。
また、立命館大をやめた奈良本氏の「この紛争がなかったら、大学に対して尋ねることができなかったし、自分の学問も問いただすことができなかった。紛争によって、大学とは何か、学問とは何か、思想とは何か、と問いただすことができた」という発言とあいまって、「知性の反乱」としての大学闘争の本質、その広がりを認識することができるのである。
<70年問題との取組み>
ところで、この「朝日ソノラマ」も発刊以来、ことしで10年目を迎えるが、2年前あたりから、大幅な編集方針の転換が目立っている。「それ以前は、娯楽的要素が強かったが、音という機能を生かして、歴史の証拠としての録音ということに、積極的に取組みはじめた」(「朝日ソノラマ」編集部の話)そうである。
事実、ことしにはいっての特集内容をみても、1月号「われわれにとって70年安保とは何か!」、2月号「激動の東大」、3月号「70年への革新戦列」、4月号「70年への市民運動!」、5月号「沖縄」、6月号「毛沢東主席と九全大会」といったように、70年問題と真剣に取組み、歴史の足跡を的確に記録しているのである。(筆者注:写真下段)
音声だけのラジオ、音声と映像が結びついたテレビ。こうした放送に比して活字と音声が組み合わされた雑誌として誕生したのが「朝日ソノラマ」である。だが、テレビの場合、音と映像が完全に有機的に結合されているのに対し、ソノラマは、無機的な結合である。雑誌を買っても読者に聞く意志がなければ、ソノシートは「無用」の存在である。そこに、このメディアの弱点があるわけである。
<二元的機能の重要さ>
また、発刊当時の10年前に比べれば、オーディオ分野の「変革」はめざましいものがある。ステレオの普及、さらにはカセット・テープの出現と普及。音質からみれば、ソノシートは太刀打ちできない。したがって、ソノラマとしては、こうしたメディアとは「競合」しない分野を選ばなければならないわけである。
(No285-2に続く)
コメント