5月28日、「ベ平連」の元事務局長、吉川勇一氏が逝去された。No390で吉川氏を追悼して、「週刊アンポ」第1号に掲載された「市民運動入門」第1回という吉川氏の記事を掲載したが、この記事は連載記事なので、吉川氏の追悼特集シリーズとして、定期的に掲載することにした。
今回は「週刊アンポ」第3号に掲載された「市民運動入門」第3回を掲載する。
この「週刊アンポ」は、「ベ平連」の小田実氏が編集人となって、1969年11月に発行された。1969年11月17日に第1号発行(1969年6月15日発行の0号というのがあった)。以降、1970年6月上旬の第15号まで発行されている。

【市民運動入門第3回 吉川勇一 週刊アンポNo2 1969.12.15】
「ニュース・通信を発行しよう
沢山の市民運動グループが機関紙を出している。タイプ・オフもあればガリ版刷りのものもある。発行部数も数千のものから数十部のものまでさまざまである。ずい分前から続いているものは、みな立派な内容で、「ベ平連通信ふくおか」や「ベトナム通信」(京都)、「ちょうちんデモ・ニュース」(武蔵野・三鷹)などは毎号教えられるところが多い。比較的歴史の新しいものでも、「大泉市民のつどい」が発行している数々のパンフレットやビラなど、実に素晴らしい。グループで発行しているものではなく、個人で出しているものもある。姫路の向井隆さんが発行している「イオム通信」は、同じく「自由連合」とともに毎号必読のものだろう。
多くは月刊か不定期刊だが、最近になって驚いたことに日刊紙が出だした。福岡ベ平連による「日刊アンポ」や名古屋ベ平連による「夕刊アンポ」で、ガリ版やタイプオフ刷りで毎日発行されている。その日の政治的事件の解説や行動へのよびかけなどがのって、キャンパスや街頭などで配布しているのだという。
「週刊アンポ」や「ベ平連ニュース」など、全国に読者をもっている定期刊行物があっても、それだけでことはどうしても足らない。それぞれの地域や職場に即した内容をもつこうしたニュースや通信は是非とも発行したい。体制側の宣伝活動は、物量にものをいわせ、さまざまな手を使ってゆがんだ事実を報道し、われわれの考え方を一定の方向へ押し流そうと懸命である。この秋の気違いじみた警備・弾圧態勢は警察とマスコミの一体となった共同作戦によって強引につくりあげられた。彼らのやり方は、かなりきめが細かくなったとはいえ、しかし、一定に地域の中で、人びとが共通に体験した事実に基づき、直接的に語りかけることのできる刊行物の方は、それを逆に下からくつがえすこともできるだろう。
運動に加わっている人びと、これから加わろうと思っている人びとが、嘘いつわりのない自分たちの気持ちをそのままぶつけて書いた文章は、何百万、何千万と刷られてても管理と操作の道具である人間性を無視したマスコミの報道をうち破ることができるだろう。
最近の例では、佐渡の自衛隊基地内で発行されていたガリ版刷りの新聞「アンチ安保」が全国にまきおこした波紋を挙げることができる。たった数十枚か数百枚発行のビラのような新聞だが、それが自衛隊の本質を突き、仲間の自衛官に心からの訴えかけをしているものであるために、防衛庁はあんなに慌てふためいたのである。
まずは簡単なものでいいから自分たちの機関紙をつくろうではないか。いや、機関紙という言葉は適当ではない。機関紙というと、労組や政党が発行する活版の新聞みたいなものが連想されるし、それになんとなく閉鎖的で、仲間うちだけが読んでいればいいような感じがする。
われわれの場合は、続けて出されるビラのようなものだっていい。ただ、デモと同じようにいつも広く開かれていて、市民運動に参加している人はもちろんのことだが、参加していない人びとに向けて訴えかけ、考えてもらうような内容でありたい。
だから仲間うちだけにしか通用しないような言葉づかいは困るし、一人よがりのお経みたいなものもいただけない。
ガリ版の字は下手でもいい。ただ、丁寧に書き、丁寧に刷って読めるような印刷でありたい。半分消えかかったり、原紙にしわがよって2、3飛んで刷られたものは、せっかくだが読む気がおこらない。
ニュースの題字のところだけ版画で色刷りにしたものがあるが、このちょっとした工夫でぐっと手づくりの感じが出て親しみがもてる。
細かいことだが、発行者の連絡先なり電話なりは、必ず明記すべきだろう。一方通行では読んだ人の反応を期待していないということになる。
さて、こうしたニュースや通信類を交換しあうことは楽しいし、また有益でもある。直接交渉もいいが、長野ベ平連の努力で「資料交換センター」という機関ができている。ここへ、一定の手数料をつけて送ると、全国の主要グループに配布してくれるし、それと交換に各地のグループが発行した新聞や通信や資料がまとめて送られてくる仕組みになっている。自分たちでいちいち切手をはって郵送するよりも手間がはぶけるだけでなく郵送料もずっと安くつく。長野ベ平連の苦労は大変だと思うが、その苦労にこたえるためにも、各地の市民運動グループがこのシステムをもっともっと活用するようにお奨めする。利用者がすくなければ。この折角のセンターもつぶれてしまうだろう。
(終)
【お知らせ】
土屋源太郎さんの本が出ました。9月4日(金)発売です。
「砂川判決と安保法制 最高裁判決は違憲だった!」

安倍政権は集団的自衛権行使を憲法解釈変更で閣議決定しました。
今国会ではこの法制化のため、安全保障関連法案が審議されています。
安倍政権は、この法案が合憲であることの根拠は「砂川事件最高裁判決(1959年12月)」にあると主張しています。
しかし、最高裁での審理の争点は「安保条約に基づく米軍の駐留が違憲であるか否か」であり、集団的自衛権について審理されたものではありません。
更に、2008年、米国立公文書館で発見された公文書によって、米国が日本の司法に介入したことだけではなく、最高裁判決が憲法37条の「公平な裁判所」に違反した無効な判決であったことが明らかになりました。
この本は砂川事件の元被告であり、現在、砂川事件の再審請求を行っている土屋源太郎氏へのインタビューを中心に、砂川闘争、アメリカ公文書、伊達判決、最高裁判決、再審請求の現状などが掲載されています。
世界書院発行 600円(税別)
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