
(文書が長くブログの字数制限を越えるため、No304-1からNo304-4に分けて掲載します。)
8月17日(土)、 下北沢の小劇場楽園で行われた福島県立大沼高等学校演劇部の東京公演「シュレーディンガーの猫~OUR LAST QUESTION」を観に行ってきた。
この作品は 「東日本大震災の原発事故により避難生活を強いられた高校生が転校先の生徒と紆余曲折を経て友情を深めていく姿を描く」作品である。
この作品は、福島県高校演劇コンクール最優秀賞・創作脚本賞を受賞したが、東北地区高校演劇発表会では「内容が重い」など厳しい評価を受け、優良賞にとどまった。
今年の3月にいわき市で行われた「全国高校演劇研究大会」での公演を、NPO法人「大震災義援ウシトラ旅団」の理事長か観たことがきっかけで、ウシトラ旅団の支援による下北沢での公演が企画された。
この演劇は福島県高校演劇コンクール最優秀賞・創作脚本賞を受賞したとはいえ、東京では知られていない。また、8月15日から18日までの4日間で合計7公演を行うということで、5~600人分のチケットを販売する必要がある。かなりハードルが高い。
当初、チケット販売は出足が悪く、7月上旬のウシトラ旅団メールマガジンでは「チケット販売はまことに淋しい限りです。どうぞひとはだも、ふたはだも脱いで積極的なご参加をお願いしたいと切にお願い申し上げます。ホント、やばいっす!!という体であります。たとえば8月17日の18:00の回は現在2枚!2枚ですよ・・・事務局としても黙って無策でいるわけではありません。様々あの手この手とやっているつもりではありますが、力不足は否めません。あと1カ月と少し。どうしても会員の皆様ひとり一人のお力が必要です。」という緊急のお願いも回ってきた。
その後、ウシトラ旅団は「福島県立大沼高校演劇部東京公演を成功させる会」を起ち上げ、7月下旬には東京新聞にも紹介記事が掲載された。また、8月3日(土)には、4大学共闘として、下北沢駅と御茶ノ水駅で街頭情宣活動を行ったこともあり、8月上旬にはチケットが完売となった。
当日、下北沢の小劇場楽園の入り口でY・R氏と一緒になり、劇場内に入った。席が70席ほどの小さな劇場である。観客と演じる者との距離が近いということでもある。開園前に席は満席となった。開園前に高校生たちが売っていたシュレーディンガーの猫の宣伝が入ったTシャツを買った。(写真)
パンフレットを見ると、演劇部の顧問のS教諭の言葉が載っている。
「福島県の会津地方には被災した転校生がたくさんやってきました。彼ら、彼女らは異郷の地で健気に生きており、前向きなその姿に、平穏無事な毎日を過ごす私たちの方が励まされることがあります。でも、本当は、被災者は誰もが等しく心に傷を負い、先の見えない不安や希望を持つことが出来ない憤りに耐えています。時折垣間見るそうした深い悲しみに触れた時、この物語は誕生しました。悲劇は続いています。それを忘れたくない、忘れないでほしい、それがこの物語の願いです。」
S教諭は明大文学部卒とのこと。公演前にウシトラのN氏が紹介してくれた。
劇は、被災して高校に転校してきた「絵里」が再び転校していくお別れ会から始まる。お別れ会でのクイズの練習の場面から劇は進んでいく。
高校生たちのストレートな演技がとてもよかった。気持ちが伝わる公演だった。
ラストあたりでは涙を抑えることが出来ず・・・。
この日は、公演終了後、演劇部の高校生たちとのトークイベントがあったので、その様子を紹介する。演劇部の高校生たちの気持ちが良く分かる内容である。
<アフタートーク>(要約)
司会はNPO法人「大震災義援ウシトラ旅団」理事長
司会『私が生徒さんからの聞き出し役、聞き役をやりたいと思います。3人の2年生に出ていただきます。みなさんどうぞ。』
(拍手)
司会『東京で演劇のメッカと言われるところで公演をやることについて感想を。』
Mさん『お腹が痛くなるくらいドキドキして、毎回毎回キューとなるくらい痛くて、だけどすごくうれしくて楽しませていただいています。』
Sさん『Mさんに言いたいことを言われてしまいましたが、下北沢ということころでできて、本当にうれしいです。お客さんが近いじゃないですか。大会だとそれなりに距離があるんですが、直で伝えられる、真っ直ぐ伝えられる。』
司会『すぐ目の前で泣いているしね。』(笑)
Sさん『つられてこっちも・・(泣いちゃう)。』(拍手)
S君『最初は緊張しました。でも3日間やって緊張より楽しさの方が上回ったんです。いやー、この楽園でやって本当にうれしいと思っています。』(拍手)
(No304-2に続く)