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(No331-4の続きです)

19 秋田明大・31(68年日大全共闘議長)(現在地元の自動車修理工場で働いている)

広島県音戸町にて(写真)

村上「この番組はボブディランに関する番組なんですね。」

秋田「はい。」

村上「それで、ディランに関することをずっと追っていくと、やっぱり、60年代という時代のことになってしまって、それでこうやって呉まで来たんですけど、僕、ずっと考えていたんですよね、何を聞きに秋田さんのところに来るんだろうと、ずっと考えていたんですけど、結局、何て言うのかな、ずっとここに来る汽車の中でも考えていたんですけど、結局、僕は何かを質問しに来るんじゃなくて、何かこう、秋田さんに何か一つだけ言いたいことがあって来るんじゃないかという気がずっとしてて、秋田さんから見ると、僕なんか本当に関係ない人間なんだけど、僕は違うんですね、秋田さんという人は。
勝手に、何ていうのかな、今の秋田さんがどうであれ、本当に英雄な訳です、僕にとっては、僕の世代にとっては。だから、何ていうのかな、すごく言い方が悪いんだけど、これから僕は仕事をしていくだろうと思うんですね。その上で、僕が昔テレビで見たり、本読んだりして、本当に感動した人たちに恥ずかしくない仕事をしたいなと思うんですよ。
言い方はすごくおかしいんですけど、だから、そのことだけを、何か言いに来たような気がするんですね、秋田さんに。何か質問じゃなくて。」

秋田「どうなんですかね・・・。何か・・・昔、何かあることがどこかにあったというようなね、それは綺麗に見えるかもしれませんけどね、何かドロドロした、それは人間の怨念とか何とかいうんじゃなくて、ドロドロしてメチャメチャな時代がどこかにあったということじゃないかと思うんですけどね。」

村上「だから、もちろんそれはそういうもんだっただろうしね・・」

秋田「はい。」

村上「僕なんかテレビのブラウン管を通してしか、それから新聞を通してしか分かんなかった事なんですけど、やっぱり・・・ずっとそれまで17年くらい生きてきて、僕、佐世保なんですね。で、エンタープライズが来てから、あの頃、ゴチャゴチャしたものがあったんですけど、それで、大きく僕は変わったと思うんですね、僕自身。僕はこれからやるんだし、その上で、あの時の日大全共闘の闘いが僕らにとって、何ていうのかな、すごく勇気づけられたし、考えさせられたし、感動を与えてくれて、ものすごくパワーがあったということを言いに来たんだろうと思うんです、今はどうであれ。
NHKの人はいろいろ質問して欲しいのかもしれないけど、僕は本当はそれだけなんですね・・・。(長い沈黙)
もう東京には全然帰ろうという気は・・帰ろうじゃないや、行こうという気はないんですか?」

秋田「いや、暇があったら行って見ようと思いますけどね・・・。」(海を見つめる。沈黙)

東京公演の映像が流れる
<字幕>
公演回数11回  観客動員数10万  ギャラ推定3億5千万

20 村上 龍
(番組のラッシュを観終わって)

『ラッシュ見て思ったのは、スパイ大作戦というテレビ映画をすぐ思い出して、あの中で主人公が「おはようヘルプス君」という始まりで、そしてあのテープでは「ところで君の使命だが・・」という風に始まるんですよね。それで、この番組のここまでは結局、資料を提供しているだけで、「ところで君の使命だが」というのはないんですけども、恐らく「ところで君の使命だが」というのは、僕がここから出て行って、家に帰っても見つからないんじゃないかと思うんですね。それで、その次のやつは結局、たえずこことは違う場所、こことは違う場所にあって、その違う場所に行くには、やっぱり、飛ぶしかないんだろうと思います。ただ、沢山の人に会って疲れましたけど、みんなそれぞれ生きてて、生きているというのは単純なことだけど、すごいなと思いました。ただ、でも生きてるだけじゃ全然つまんないから、「ところで君の使命だが」というのが大事で、それを探すために、本当、飛ばなきゃいけないんだなと、そう思いました。』

音楽番組と思って見ていると期待を裏切られるが、とても面白い番組だった。
合計19名へのインタビュー・・・最後は日大全共闘の秋田議長で終わる。この番組の主役はボブディランではなく、インタビューに登場した様々な人たち、そして若き日の村上龍である。

(終)

※ 来週は「春休み」でブログとHPを休みます。次回は3月21日です。