昨年11月、明大土曜会メンバーに、杉並区の明治大学和泉校舎で行われた明大和泉祭で「キャンパスの中で自衛官募集が行われていた」という情報が以下の写真とともに寄せられた。
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11月3日、明大和泉校舎キャンパスの図書館前のテントには「自衛官募集中」の「のぼり」がある。自衛隊の「高円寺募集案内所」のテントである。
机の上には迷彩色のヘルメットなどが並べられている。興味を持った学生に被せるつもりなのだろうか?
大学構内で公然と「自衛官募集」の活動をしているということは、大学が「自衛官募集」活動を公認しているとうことなのだろうか?

明大土曜会としては、この問題は見過ごすことができない。というのは、明大土曜会では、この問題が起こる前に、昨年6月に駿河台校舎前で、7月に和泉校舎前で明大当局に対する「横断幕スタンディング」の抗議行動を実施していたからである。
この「横断幕スタンディング」は、明大土曜会のF氏(ジャーナリスト)によると、以下のような趣旨である。
『明治大学では昨年来、学生たちが“フスマ1枚分”くらいの立て看板に「私たちの思いを立て看板で表現しよう」と書いてキャンパスに置いたところ、これが撤去され、警察官が呼ばれ、大学から「注意処分」を下された。その後も「立て看を取り戻そう」と活動を続けている▼大昔のようなデカい看板に政治スローガンを書きなぐったものではない。土曜会からすればシンプルな板一枚である▼「これはおかしいぞ」と土曜会メンバーたちは「わが母校はなんて恥ずかしいことをするのか」と抗議の横断幕を出した次第』

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<横断幕に書かれていること>
明治大学が誇れること
★「軍事利用の研究・連携活動の禁止」の新聞広告を掲載した(2017年)
★日本初の女性弁護士を輩出した(1940年)
明治大学が恥ずべきこと
★学生の表現の自由である立て看板を撤去して警察を呼んだ
★生田校舎の「イスラエル工科大学と手を切れ」の立て看板が撤去された

ちなみに明大土曜会は、明治大学のOBとOGが中心となっている「親睦団体」であるが、他大学のOBや若い世代も含めた多様な人たちが集まる「情報交換と交流の場」であり、定期的に会合を開いている。

昨年12月に開催した明大土曜会で、明大和泉祭での自衛官募集について抗議するため、明大学長あてに公開質問状を出すことの提案がなされ、承認された。
それを受け、以下の内容で抗議と公開質問状を明大学長あてに配達証明付きで郵送した。
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明治大学学長 上野正雄殿
明治大学土曜会
 
明大和泉校舎における「自衛官募集」ブース設置への抗議と公開質問状
 
私たちは15年前に設立した、明治大学OB・OGによる親睦団体「明治大学土曜会」です。
2024年11月3日、「明大祭」が行われた和泉校舎キャンパスに「自衛官募集」のブースが設置されたことに、強く抗議し、以下の公開質問状を送ります。
質問状への回答は2025年1月31日までに送付いただきたい。
 
【抗議】
・2024年11月3日、「明大祭」が行われた和泉校舎キャンパスで「自衛官募集」のブースが設置されたことに、強く抗議する。
・明治大学は2017年に発表した「社会連携ポリシー」に学問・研究の目的として「環境保全・平和利用」を掲げ、「軍事利用・人権抑圧等、平和に反する内容を目的とする研究・社会連携活動を一切禁止する」と宣言しています。
・にもかかわらず、今回の「自衛官募集」ブースの設置は、この「宣言」を明らかに逸脱した行動で、キャンパスを“軍事利用”の場に提供する「社会連携」と言わざるをない。
・全国の大学に先駆けて発表した「社会連携ポリシー」の理念を、いかなる経緯と理由で逸脱して行ったのか。以下の公開質問に回答いただきたい。
 
【公開質問】
①  「自衛官募集」ブースの提供は、いつ、どの機関・団体からの要請だったのか。
②  要請を受けたのは明治大学のどの部署なのか。どういう議論をしたのか。
③  「自衛官募集」のブース設置を受諾・決済したのは上野正雄学長か。
④  「自衛官募集」ブースの設置は明治大学の「社会連携ポリシー」に反していると思うか。逸脱していないとするならば、その根拠は何か。
 
以上の質問に誠実な回答を求めます。
2024年12月13日
「明大土曜会」共同代表

(参考:社会連携ポリシー)

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●軍事利用を目的とする研究・連携活動の禁止
 明治大学は、「社会連携ポリシー」の中に「環境保全・平和利用」を掲げ、軍事利用・人権抑圧等、平和に反する内容を目的とする研究・社会連携活動を一切禁止しています。明治大学が目指すのは、高度で先進的な研究成果をもとに、学外研究機関との交流をはじめ、民間企業、国、自治体やその地域社会等と連携して、平和で豊かな社会を創造することです。
 軍縮と平和の探求がテーマの一つであり、軍縮・軍備管理の本質的構造の解明に取り組む「国際武器移転史研究所」の研究プロジェクトが、2015年度には私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に選定されました。また、生田キャンパスにある「明治大学平和教育登戸研究所資料館」では、太平洋戦争中に陸軍が行った秘密戦の資料を公開しています。
 明治大学はこれからも平和を探求する研究と社会連携活動を推進していきます。
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この明大和泉祭における「自衛官募集」問題については、明治大学当局への公開質問状送付とともに、雑誌『創』編集長に情報提供を行い、雑誌『創』(2025年1月号)に記事を掲載していただいた。
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(記事の全文)
【いくら何でもこれは・・・
『明大和泉校舎の学園祭 何と自衛官募集が行われていた】
重信房子さんの連載にたびたび明大OBらの「明大土曜会」が登場するが、その土曜会で問題になり、本誌に話があったのがここに掲げた写真。
いやあ隔世の感ありというか、かつて明大は学生運動の拠点だったが、和泉校舎の学園祭「明大祭」で11月3日、何と「自衛官募集」が行われていたというのだ。
大学の管理強化が進んで学生自治など存在しなくなったいわれるご時世とはいえ、これはいくら何でもひどすぎる。というわけで有志が告発ビラをまいたり、大学当局の意思を問おうといった事態になっている。前ページにかつての明大の写真を載せた後だけにいやはや何とも・・・。(絶句)
明大土曜会では、明大学長宛てに「公開質問状」を送る予定だという。』

「公開質問状」の回答期限は2025年1月31日であったが、1月23日付けで以下のような回答が届いた。
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明治大学土曜会 共同代表
○○殿 ○○殿 ○○殿 ○○殿 ○○殿
明治大学教学企画事務部
「明大和泉校舎における『自衛官募集』ブース設置への抗議と公開質問状」について
2024年12月13日付で明治大学学長宛に送付のありました表題の件につきまして、本学 では、学長に寄せられる質問・要望等に対して、個別に回答は行っておりません。ご理解の 程よろしくお願いいたします。
なお、お問い合わせの件に関しましては、来週を目途に大学の見解を大学HPに掲載する 予定です。
以上
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その後、1月28日に明大のホームページに以下の文章が掲載された。
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明大祭(2024年11月2日~4日)のブース出展に関して
2025年01月28日
明治大学
本学では、大学祭を地域との連携と貢献の場として位置づけ、学外諸団体にPRの場を提供してまいりました。今回のブース出展に関し、大学、大学祭実行委員会および出展団体との間の意思疎通に齟齬があり、リクルート活動を行った団体がありました。
大学祭に来場された皆様に誤解を与える可能性があり、確認が十分でなかった点を認識しております。
今後は、このような事態が再発しないよう、大学、大学祭実行委員会および出展団体間で十分確認の上、大学祭を実施してまいります。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このホームページ掲載の文章を理解できる人がいるだろうか?明大土曜会のメンバーであれば「自衛官募集問題だな」と分かるが、全く知らない方が読んだ場合、何のことか分からないと思う。
自衛隊の「高円寺募集案内所」が何故出展を認められたのか、「意思疎通の齟齬」とは何だったのか、「誤解を与える」とはどういう誤解なのか、「社会連携ポリシー」との関係はどうなのかなど、具体的な記述が無い。この回答では明大の入試でも0点だろう。
また、和泉キャンパスの図書館前という目立つ場所なので、大学関係者が「リクルート活動」に気づかないことは考えにくい。
さらに、自衛隊の「高円寺募集案内所」は自衛官等募集に関する各種採用試験の案内、 面接指導等を行っているところなので、出展を認めた段階で「リクルート活動」があることは想定できたと思われる。
今回の明大土曜会の「公開質問状」がなければ、この問題はそのまま既定事実として認識され、今後も同じようなことが続く可能性があったと考えざるを得ない。

今回の1月28日付の明治大学のホームページに掲載された文章は、具体性に欠け曖昧さだけが残る文章である。これを明大土曜会の「公開質問状」の回答として受け止めることは出来ない。引き続き明大当局には、誠実な対応を求めていきたいと考える。
明大土曜会としては、明治大学が「軍事利用・人権抑圧等、平和に反する内容を目的とする研究・社会連携活動を一切禁止する」という「社会連携ポリシー」の理念を忠実に推進していくことを望むばかりである。
(終)

【『ただいまリハビリ中 ガザ虐殺を怒る日々』の紹介】
重信房子さんの新刊本です!
『ただいまリハビリ中 ガザ虐殺を怒る日々』(創出版)2024年12月20日刊行
本体:1870円(税込)
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「創出版」のリンクはこちらです。

昔、元日本赤軍最高幹部としてパレスチナに渡り、その後の投獄を含めて50年ぶりに市民社会に復帰。見るもの聞くもの初めてで、パッケージの開け方から初体験という著者がこの2年間、どんな生活を送って何を感じたか。50年ぶりに盆踊りに参加したといった話でつづられる読み物として楽しめる本です。しかもこの1年間のガザ虐殺については、著者ならではの記述になっています。元革命家の「今浦島」生活という独特の内容と、今話題になっているガザの問題という、2つのテーマをもったユニークな本です。

目次
はじめに
序章 50年ぶりの市民生活
第1章 出所後の生活
53年ぶりの反戦市民集会/関西での再会と初の歌会/小学校の校庭で/52年ぶりの巷の師走/戦うパレスチナの友人たち/リハビリの春
第2章 パレスチナ情勢
救援連絡センター総会に参加して/再び5月を迎えて/リッダ闘争51周年記念集会/お墓参り/短歌・月光塾合評会で/リビアの洪水
第3章 ガザの虐殺
殺すな!今こそパレスチナ・イスラエル問題の解決を!/これは戦争ではなく第二のナクバ・民族浄化/パレスチナ人民連帯国際デー/新年を迎えて/ネタニヤフ首相のラファ地上攻撃宣言に抗して/国際女性の日に/断食月(ラマダン)に/イスラエルのジェノサイド/パレスチナでの集団虐殺/パレスチナに平和を!
特別篇 獄中日記より
大阪医療刑務所での初めてのがん手術[2008年12月~10年2月]
大腸に新たな腫瘍が見つかった[2016年2月~4月]
約1年前から行われた出所への準備[2021年7月~22年5月]

【『新左翼・過激派全書』の紹介】
ー1968年以降から現在までー
好評につき3刷決定!
有坂賢吾著 定価4,950円(税込み)
作品社 2024年10月31日刊行
30533

「模索舎」のリンクはこちらです。

(作品社サイトより)
かつて盛んであった学生運動と過激派セクト。
【内容】
中核派、革マル派、ブント、解放派、連合赤軍……って何?
かつて、盛んであった、学生運動と過激な運動。本書は、詳細にもろもろ党派ごとに紹介する書籍である。あるセクトがいつ結成され、どうして分裂し、その後、どう改称し・消滅していったのか。「運動」など全く経験したことがない1991年(平成)生まれの視点から収集された次世代への歴史と記憶(アーカイブ)である。
貴重な資料を駆使し解説する決定版
ココでしか見られない口絵+写真+資料、数百点以上収録
《本書の特徴》
・あくまでも平成生まれの、どの組織ともしがらみがない著者の立場からの記述。
・「総合的、俯瞰的」新左翼党派の基本的な情報を完全収録。
・また著者のこだわりとして、写真や図版を多く用い、機関紙誌についても題字や書影など視覚的な史料を豊富に掲載することにも重きを置いた。
・さらに主要な声明や規約などもなるべく収録し、資料集としての機能も持たせようと試みた。
・もちろん貴重なヘルメット、図版なども大々的に収録!

【『歴史をひらいた女たち』の紹介】
江刺昭子著 定価2,200円+税
インパクト出版 2025年1月25日発行
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インパクト出版のリンンクはこちらです

女性史研究、女性評伝作家・江刺昭子の集大成。物言う女を排除する男社会のまっただ中で、社会変革と権利のために、声を上げ告発し記録する女たちの肖像。

歴史をひらいた女たち 人物で読むジェンダー史 目次
Ⅰ 弾圧されても、信じる道を行く 
 「表現の不自由」と闘った女たち
  生誕130周年の山川菊栄(1)『おんな二代の記』に学ぶ
  生誕130周年の山川菊栄(2)魂を形成する権利を男に委ねるな
  生誕130年の山川菊栄(3)「赤瀾会」メンバーの軌跡 
  右翼と官憲に踏みにじられた初の女性デー   
  初の国際女性デーは100年前●佐々木晴子が偽名で演説  
  沖縄は解放されたか 
  本土に先駆けた沖縄の女性参政権行使 
  思想弾圧の先駆け(1)「浪曼事件」が奪ったもの  
  思想弾圧の先駆け(2)詩人篠原あやは、なぜ逮捕されたのか
  港の別れ 横浜時代の福田英子  
  石川雪女覚書
Ⅱ 原爆被害を告発し、記録する 
  栗原貞子の予言のような言葉  
  被爆の実相を描いた林京子『祭りの場』 
  「この世界の片隅に」の街を歩く 
   ケロイドのような碑石  
  ヒロシマの語り部、関千枝子と古家美智子 
   破滅の危機から光へ向かって歩め 
  国策に翻弄された広島市女原爆慰霊碑  
  被爆の実相を綴った大田洋子『屍の街』(1)検閲に翻弄され数奇な運命をたどる 
  被爆の実相を綴った大田洋子『屍の街』(2)評価されながら掲載されず 
  被爆の実相を綴った大田洋子『屍の街』(3)検閲と自主規制 
  被爆の実相を綴った大田洋子『屍の街』(4)「山上」に書き残した検閲体験   
Ⅲ 60年安保と樺美智子 
  日米安保60年 樺美智子はなぜ死んだのか 
  日米安保60年(2)樺美智子とは何者だったのか 
  日米安保60年(3)逃げずに闘い続けた樺美智子 
  日米安保60年(4)樺美智子「運命の日」 
  日米安保60年(5)樺美智子、死因の謎 
  日米安保60年(6)樺美智子が投げかけた問い 
  闇の中で聞いた樺美智子の悲鳴 
  樺美智子 「想い人」Sとは誰か 
Ⅳ 重信房子と遠山美枝子 
  2人の運命を分けたものは何か 
  「2人で社会科の先生になろう」 
「ふう、あなたが先に死ぬんだね」 アラブにたつ日の涙 
「兵士として徹底的に自己改造する」と山へ 
「私たちが新しい世の中を作る」と最後の言葉 
重信房子 『はたちの時代』

わたしが出会ったひと ―あとがきに代えて

【お知らせ その1】
「続・全共闘白書」サイトで読む「知られざる学園闘争」
●1968-69全国学園闘争アーカイブス
このページでは、当時の全国学園闘争に関するブログ記事を掲載しています。
大学だけでなく高校闘争の記事もありますのでご覧ください。
現在17大学9高校の記事を掲載しています。


●学園闘争 記録されるべき記憶/知られざる記録
このペ-ジでは、「続・全共闘白書」のアンケートに協力いただいた方などから寄せられた投稿や資料を掲載しています。
「知られざる闘争」の記録です。
現在16校の投稿と資料を掲載しています。


【お知らせ その2】
ブログは概ね2~3週間で更新しています。
次回は来年2月28日(金)に更新予定です。